●今回の会合では、金融政策の現状維持を予想、またフォワードガイダンスも特に変更はないとみる。
●注目は植田総裁の記者会見で、9月9日報道のインタビューについて、詳細を問われることになろう。
●政策予想では物価目標実現までの距離感と賃上げ動向が重要だが、まだ修正を急ぐ状況にない。
今回の会合では、金融政策の現状維持を予想、またフォワードガイダンスも特に変更はないとみる
日銀は9月21日、22日に金融政策決定会合を開催します。そこで、以下、今会合における主な注目点を整理していきます。はじめに、金融政策について、弊社は長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)と資産買い入れ方針の現状維持を予想しています。日銀は前回7月の会合で、より柔軟なYCCの運用方針を決定しており、現時点ではその効果を見極める必要もあることから、追加の修正を急がないとみています。
なお、金融政策の先行きを示すフォワードガイダンスでは現在、2%の物価安定の目標について、賃金の上昇を伴う形での達成が示されています(図表1)。また、長短金利操作付き量的・質的金融緩和は、物価目標の実現が安定的に持続するために必要な時点まで継続し、マネタリーベースの拡大方針も、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで継続するとしていますが、これらも特に変更なしと考えます。
注目は植田総裁の記者会見で、9月9日報道のインタビューについて、詳細を問われることになろう
次に、植田和男総裁の記者会見について、今回は特に市場の関心が高まっていると思われます。植田総裁は、読売新聞との単独インタビューで(9月9日報道)、「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば、(解除を)やる」と述べ、賃金と物価に関し「十分だと思える情報やデータが年末までにそろう可能性もゼロではない」と語りました。これらの発言を受け、市場では早期のマイナス金利解除の思惑が浮上しました。
その後、日銀内で植田総裁発言と市場の解釈とのギャップを指摘する声が出ていると報じられましたが(9月15日ブルームバーグ報道)、今回の記者会見において、植田総裁はインタビューでの発言に関し、詳細を問われる可能性が高いとみています。具体的には、マイナス金利解除の時期や、賃金と物価に関する十分な情報やデータが年末までにそろうか否かの質問などが想定されます。
政策予想では物価目標実現までの距離感と賃上げ動向が重要だが、まだ修正を急ぐ状況にない
日銀植田新体制がスタートした4月以降、総裁・副総裁など政策委員会メンバーの発言を踏まえると、日銀の金融政策を見通す上では、①物価目標の実現までの距離感、②賃上げの動向、を見極めることが重要と考えています。したがって、①については、メンバーの物価見通しに関する発言や、「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)における物価見通しが(図表2)、②については、2024年の春闘が、それぞれ注目されます。
②の確認には少し時間を要し、また、①は植田総裁と内田副総裁ともまだ距離があるとの認識で、次回10月会合では最新の展望レポートが公表されます。そのため、今会合では、政策の据え置きと先行きの変更示唆はないと予想されます。この通りの結果であれば、緩和継続との受け止めから、国内市場は若干の長期金利低下、円安、株高の反応が見込まれますが、総じて影響は限定的と思われます。
(2023年9月19日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【日銀】市場では「早期のマイナス金利解除」説が浮上したが…ストラテジストが「今回の会合」の“中身”を予想』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト