建設業界の阿鼻叫喚「資材価格高騰+インボイス導入+2024年問題」…生き残り策はあるか【弁護士が解説】

建設業界の阿鼻叫喚「資材価格高騰+インボイス導入+2024年問題」…生き残り策はあるか【弁護士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

働き方改革に伴う労務管理の厳格化により、残業時間の上限越えで刑事罰の可能性も――。厳しい法改正に建設業界もいよいよ正面から取り組むことになりますが、課題はそれだけではなく、建設資材の高騰、インボイス制度の導入といった難問も立ちはだかります。厳しい状況をどのように乗り切ればいいのでしょうか。弁護士法人山村法律事務所の山村暢彦氏が解説します。

価格高騰+インボイス導入+「2024年問題」…難問山積

働き方改革の一環としての法改正で、残業時間の上限規制が制定されることになり、大企業は2019年4月1日から、中小企業は2020年4月1日から施行されています。猶予期間を設けられていた建設業ですが、いよいよその終了が迫り、2024年度からは建設業も残業時間の上限規制を遵守しなければなりません。これが「建設業の2024年問題」なのです。

 

「2024年問題」という視点では、労働法制の問題に見えがち・捉えられがちですが、より建設業界の大きな視点で見ると、建築に必須な「職人さん・業者の確保」という大きなテーマがあることがわかります。

 

令和5年10月1日からスタートする「インボイス」制度との兼ね合いからも、しばしばこの点が話題となっています。「インボイス制度」をざっくりとご説明すると、今まで免税事業者とされていた個人事業主が消費税の納入負担を受ける、すなわち手取り報酬が減るという制度です。

 

「インボイスによるしわ寄せが発注業者側にくるのではないのか」という懸念のもと、職人さん確保のための対応策を探るのが、建設会社側のミッションでした。

 

そもそも若い職人さん自体が減っており、今後とも職人さんの確保が大きな課題となっている現状に、さらにインボイス制度の不安が重なったことで、職人さん確保に頭を痛めた会社側は、「いっそ職人さんと雇用契約を結び、従業員になってもらったほうがよいのではないか」と考え、一時期は職人さんを従業員といて雇用する流れもありました。

 

しかし反面、「2024年問題」を加味すると、残業時間の上限規制のなか、雇用した職人さんたちに業務を依頼しながら工期を遵守していくという課題が生じます。

 

つまり、上述した状況下において、職人さん及び下請業者側の受注価格が上昇するという傾向が生じる可能性が高まっています。また、根本的に職人さんが不足しているという事情も相まって、受注価格があがっても仕事は減らせず、元請会社が頭を抱えている状況なのです。

 

基本的に建設業界は、「①施主・お客さん」から「②元請会社」が仕事を受け、「③下請会社」に工事を依頼し、その下請会社も「④専門業種ごとの職人さん」に仕事を依頼する、という垂直構造になっています。

 

①施主・お客さん

②元請会社

③下請会社

④専門業種ごとの職人さん

 

インボイス制度というのは、④職人さんの手取りが減るので、その反動として、③下請会社、ひいては②元請会社の負担が増えるのではないか、併せて職人さんを確保するのが難しくなるのではないか、という問題です。

 

また、2024年問題は、②元請会社ないし③下請会社などで働く現場監督さんの労務管理を徹底しなければならないため、②元請会社の負担が増えるのではないか、ひいては①施主・お客さんの工事代金の増額や工期の長期化などに影響がでるのではないか、という問題とも整理できます。

契約書の締結による「トラブルの抑止」に期待

このように、職人さんや下請業者のニーズが高まっている反面、一度受けた仕事にもかかわらず、現場を放置し、元請会社に損害を与えてしまう下請業者や職人さんも増えています。

 

このような状況に困った元請けの企業からは、

 

「いままで工事現場ごとに契約書のひな形で契約していたが、下請会社との基本契約書を整備しておきたい」

 

「職人さんとは今まで請求書・発注書のみで仕事をしてきたが、きちんと取引基本契約書を締結しておきたい」

 

といった依頼が、弊所をはじめとする法律事務所でも増加しています。

 

もちろん、契約書の整備ですべてのトラブルに備えられるわけではないのですが、

 

「きちんと契約し、〈完成させる仕事だ〉という意識をもってもらいたい」

 

「一回きりの請求書・注文書の関係ではなく、継続的な関係であることを認識してもらいたい」

 

という声が多く聞かれます。

 

実際、業者や職人さんに現場放置等をされてしまうと、代金の清算はもちろん、元請会社としてはほかの業者や職人さんを雇って工期に間に合わせる必要があることから、非常に面倒なトラブルとなってしまいます。

 

契約書により代金清算の方法や現場放置時の違約金を定めることで、そのようなトラブルに備えることができるのです。

激動の建設業界、生き残りにはビジネスの工夫と取引先の選定が課題

オリンピック景気と呼ばれた2015年頃から、工事現場が増加する半面、景気がよいどころか、職人さんの単価があがったために破産する建設会社も現れるなど、建設業界は不安定な状況でした。

 

そのようななか、2020年のコロナショックによる建築資材の異常な高騰、2023年のインボイス制度のスタート、2024年問題、さらには職人さんの確保等、建設会社は大変な苦境に立たされています。

 

こういった状況下で、建設会社が生き残るには、労務管理体制の整備に加え、業務の改善についても真摯に向き合っていかなければなりません。また、建築を依頼する施主の立場からは、しっかりと組織体制・経営体制が整備されている信頼業者を見つけないと、依頼した建設会社が倒産するといったトラブルにも巻き込まれかねません。

 

施主、元請、下請、専門業者、職人さんといった、それぞれの立場にある方々が、この激動の建設業界のなかを生き抜くには、何よりも自身のビジネスの工夫、そして信頼できる取引先を見つけるということが、より重要になってくるといえます。

 

 

山村 暢彦
弁護士法人 山村法律事務所
代表弁護士

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