自分亡きあとの住まいは「清算型遺贈」で恩返し
◆「施設選び」は専門家の手を借りる
ひとり暮らしの心細さや、心身の状態の悪化に備えるには、「高齢者施設」に入居するという選択肢があります。
高齢者施設の運営母体や入居条件はさまざまです。保証人を求められることがほとんどですが、前述の「生前事務委任契約」のサービス提供業者を利用することでクリアできます。
ただ、慌てて民間サービスと契約を結ぶのではなく、まずは「地域包括支援センター」へ相談をしてみましょう。地域包括支援センターは市町村が設置しているもので、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等が協力し、地域の高齢者の暮らしをサポートすることを目的としています。
心身の状態に応じて通所サービスや訪問サービスを提案してくれるほか、高齢者施設への橋渡しをしてくれます。
◆死後の自宅はどうする?
無事に施設に入居できても、「住まい」の問題は終わりではありません。戸建てやマンションなど、自宅の処分にも道筋をつけておかなくてはいけません。
可能な限り住み慣れた家で過ごすとなると、「自宅の処分」がいよいよ現実味を帯びてきたときには、煩雑な事務手続きができない状態になっていることは十分考えられます。前述した「死後事務委任契約」を結び、さらに遺言執行者にも指定しておけば、自宅の処理について希望をしっかり叶えてもらえます。
◆法定相続人を経由して売却
自宅の処分について「清算型遺贈」を依頼すると、不動産を売却して得られたお金で入院費用等を清算し、余った金額を法定相続人に遺贈することができます。
ただし、不動産は故人の名義のままでは売却することはできないので、一度、法定相続人に名義変更しなくてはいけません。一旦、法定相続人に名義を移し、それから買い手へと売却するのです。
買い手から支払われたお金から諸経費や税金を差し引いて残った額が、遺贈する相手(受遺者)に渡ることになります。
◆納税義務は法定相続人が負う
法定相続人を経由して不動産を売却するケースでは、税金面で気をつけなくてはいけないことがあります。それは、登記上、法定相続人から買い手へと所有権が移るため、譲渡所得税や住民税の納税義務が法定相続人に発生するという点です。
しかし、財産を受け取っていないのに税金の負担だけがのしかかると法定相続人は納得ができません。トラブルを防ぐためにも、買い手から支払われたお金から納税分を差し引いて、法定相続人へと渡しておく必要があります。
関根 俊輔
税理士法人ゼニックス・コンサルティング
税理士
関根 圭一
社会保険労務士・行政書士
大曽根 佑一
司法書士・行政書士