「老後資金2,000万円問題」は本当か?
「老後資金は2,000万円以上準備しておくことが必要」といわれることがありますが、本当でしょうか?いわゆる「老後2,000万円問題」ですが、この根拠となっているのが、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループが2019年6月に公表した報告書「高齢化社会における資産形成・管理」です。
報告書の中身を見てみましょう。モデルケースとなっている高齢無職世帯の収支は次のようになっています。
・収入:20万9,198円
・支出:26万3,718円
毎月5万4,520円の赤字となることがわかります。赤字総額が30年間で約2,000万円になることから「老後2,000万円問題」として流布されるようになったのでした。
「不確かな情報」に惑わされない
老後に対する不安は健康面から資金面まで、誰しも尽きることはありません。そんななか「老後資金は2,000万円以上必要」というショッキングな数字を突きつけられると動揺してしまうでしょう。
しかし、算出の根拠となっている世帯の収支とあなたの世帯の収支が、全く同じ状況ということはないはずです。老後資金が足りなくなるか否か、足りないとしてその金額はいくらなのかは、計算してみなければわかりません。
不確かな情報に接していたずらに不安感を募らせていると「うまい話」をうっかり信じ込んでしまう危険があります。不安な気持ちにつけこまれ、投資詐欺の被害にあったり、金融商品を精査せずに購入して大事な老後資金を溶かしてしまう高齢者は実に多いのです。そうならないためにも、今から収支の予測を立てておくことが大切です。
老後の収入と支出を整理し、「赤字の恐れ」を取り除く
そこで、自分の老後の収入と支出を整理しておきましょう。
生活費は年金収入で賄います。趣味・娯楽・交際費には年金以外の他の収入と、貯蓄の一部を充てます。そして、医療・介護費、葬儀費・お墓の購入費、冠婚葬祭費、家の修繕・買換・処分費については、貯蓄と保険で賄います。最後に残ったお金が相続財産となります([図表1]参照)。
「赤字」の恐れがあっても慌てる必要はありません。圧縮または削減可能な支出を検討していけばよいのです。圧縮または削減可能な支出としては次のものがあげられます([図表2]参照)。
・食費
・家賃
・光熱費・水道費
・通信費
それぞれ、以下のように圧縮または削減することができないか、検討します。
【食費】
外食は極力減らす。夫婦ふたりなら自炊にこだわらず宅配弁当サービスの利用を検討してみる。一見割高でもスーパーやコンビニでの「うっかり無駄遣い」を減らせる。
【家賃】
賃貸住宅なら家賃が安い部屋へ住み替えを検討する。住まいの整理を進めれば、今より狭いスペースでも不便はなくなる。
【光熱費・水道日】
夫婦2人なら日中は同じ部屋で過ごす。夏や冬は図書館などに散歩がてら出かけ日中のエアコンを節約する。
【通信費】
夫婦、または家族で同じキャリアにする、動画を見ないならデータ通信量を小さくするなど、スマートフォンの契約を見直す。
このように、収支の予測を立てて、もし赤字になる可能性があったら、圧縮または削減可能な支出を見つけ出すことで、老後にお金が足りなくなるのを防ぐことにつながります。
関根 俊輔
税理士法人ゼニックス・コンサルティング
税理士
関根 圭一
社会保険労務士・行政書士
大曽根 佑一
司法書士・行政書士