複利の力があれば資産を増せる
13位は「『複利の力』でお金を増やす」です。マネー本の著者の多くは「複利の力」を使うことの重要性を訴えています。
「複利の力を利用できれば、莫大なリターンに頼らなくても資産を増やせる」(モーガン・ハウセル『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』/ダイヤモンド社)
「投資の意思決定を行う上で、『複利』の意味することの重要性を十分理解している人は、ほとんどいないと言ってもいい」(バートン・マルキール『ウォール街のランダム・ウォーカー』/日本経済新聞出版)
複利は、利息の計算方法の一種です。
複利について詳しく説明する前に、利息にまつわる言葉を整理しておきます。
銀行にお金を預けると(預金をすると)、「利息」がついてきます。利息はお金を貸した側が受け取る「お礼」のようなもので、「1000円に10円の利息がついた」のように、金額そのものをあらわします。
元本(預けたお金)に対してどのくらいの利息を支払うか、割合を示したものを「利率」といいます。
<利息の計算方法>
利息=元本×利率
例)元本1000円×利率5%=利息50円
「金利」は、元本に対する利息の割合で、「利率」とほぼ同じ意味で使われます。多くの場合、1年間の利息の割合(年利)を示します。
投資で使う「利回り」は、投資元本に対するある一定期間の利益を割合で示した指標のこと。利回りは投資の成績を示すので、投資が終わるまでわかりません。
投資の元本が100万円、1年で得た利益が5万円の場合、利回りは5%となります。
<利回りの計算方法>
利回り=利益÷元本
例)利益5万円÷元本100万円=利回り5%
(1)長期運用で「複利」の効果を味方につける
金利のつき方には「単利」と「複利」があります。
元国税専門官でフリーライターの小林義崇さんは、著書『すみません、金利ってなんですか?』(サンマーク出版)で、次のように説明しています。
※単利……「毎年同額の金利が上乗せされる金利のつき方」。
※複利……「もともとあるお金、すなわち元金についた金利を、次期の元金に組み入れる金利のつき方」。
例として100万円の元本を預け、金利5%(年利)で運用した場合の利息を考えてみます。1年後は、受け取る利息は単利でも複利でも5万円(税金は考慮せず)です。
単利では、2年後も3年後も受け取る利息は同じで、5万円ずつ上乗せされます。10年間運用で、利息は、5万円×10年=50万円です。
複利では、2年後は、元本100万円に1年目の利息5万円を足したものに5%の利息がつきます。2年後の利息は、(100万円+5万円)×5%=5万2500円です。3年後は、元本100万円に1年目の利息5万円と2年目の利息5万2500円を足したものに5%の利息がつきます。
3年後の利息は、(100万円+5万円+5万2500円)×5%=5万5125円です。10年後に受け取る利息は累計で「約63万円」です。
単利と複利の利息の差は10年間で、約63万円-50万円=約13万円となります。
複利では、預ける年数が長いほど、利息の増えるスピードが加速します。多くのマネー本では、「複利効果を期待できることが投資のメリット」と主張しています。
複利の効果を高めるポイント
・配当を受け取らずに再投資すると複利効果が得られる。
・複利の効果はすぐには出ないので、焦らずに時間をかけてお金を育てる。
・預ける期間が長いほど利息の増えるスピードは加速するので、できるだけ早く投資を始める。
『史上最強の投資家 バフェットの教訓』(メアリー・バフェット、デビッド・クラーク/徳間書店)には次のように記されています。
「投資の世界では、若くして天職とめぐりあえた者に絶大なるチャンスがもたらされる。『複利』という名の魔法は、時間が長ければ長いほど、より高い効果を発揮しうるからだ」
(2)元本が倍になるタイミングは「72の法則」でわかる
マネー本で複利での資産運用が語られるときにしばしば出てくるのが、「72の法則」です。イタリアの数学者ルカ・パチョーリ(1445~1517)の著書『スムマ』で記述されており、少なくとも15世紀から受け継がれています。
『年収300万円FIRE』(山口貴大【ライオン兄さん】/KADOKAWA)では、「72の法則」について次のように説明しています。
「ある金融商品に投資して複利運用した場合、元本を倍にするまでの概算の期間は『72÷その金融商品の年間利回り』で求められるというものです」
ひとことでいえば、72÷金利=元本が2倍になるまでの年数となります(「金利」は複利であることが前提。また、結果は大まかな数字で必ずしも正確ではない。なお、「72÷利率」と書かれているマネー本もありましたが、本書では複数の証券会社のウェブページにあった「金利」を採用しています)。
仮に6%の金利で金融商品を運用していたとすれば、72÷6=12(年)となり、「12年で倍」になります。
もし、1000万円を6%の金利で運用していた場合、12年で2000万円になるということです。「72の法則」を使うと、自分の資産を倍にするには、だいたい何年かかるかの目安になります。
借金が倍になる年数の計算法
また、お金を借り入れた場合、借金が2倍になるスピードもわかります。
もし、金利18%でお金を借りた場合、72÷18=4で、4年で借り入れの額が倍になる計算です。
「72の法則」は、慎重に借り入れをするのにも役立ちます。