投資家を破滅へと導くのは投資家自身の行為
12位は「感情に流されない」です。多くのマネー本が「心をコントロールすることの大切さ」を説いています。
投資で思うようにお金を増やせない原因が、人の心理傾向や感情のコントロールであるケースが多いからです。
ファイナンシャル・プランナーの中桐啓貴さんは、著書『日本一カンタンな「投資」と「お金」の本』(クロスメディア・パブリッシング)で、「(人には)利益より損失を大きく評価してしまう、という心理傾向」があるとし、「損失を嫌うので、株価が下がってもあらかじめ決めた通りに損切りができない。損失が現実になるのが嫌だから」と続けています。
「株式投資とはビジネスの一部を買うことであるという合理的な考え方をとらず、感情にまかせた投資を行なう。近視眼的な利益追求にとらわれ、ビジネスの長期的経済性を見失う……。投資家を破滅へと導くのは、(略)投資家自身の行為である」(メアリー・バフェット、デビッド・クラーク『史上最強の投資家 バフェットの教訓』/徳間書店)
マネー本に書かれていた、お金を増やすためにコントロールしたほうがいい感情は、おもに次の3つです。
コントロールしたほうがいい3つの感情
・執着心
・もっと儲けたいという欲
・失敗(損失)を怖がる心
(1)執着を手放す
投資をする人が陥りがちなのは、「買った金融商品(たとえばA社の株)で損をすると、その商品(A社の株)で利益を出そうと追いかけ続けてしまう」ことです。
株価が下がり続けているのに、「いつかは値上がりするだろう」と手放せず、そのまま保有を続ける。
結局、値が上がらず、塩漬け※の状態になるケースもあります。
※塩漬け……株が、買ったときの価格よりも、値下がりしてしまったため、売ると損が出る。そのため、長期間売らずに保有している状態のこと。
ひとつの商品に固執するあまり、他の魅力的な商品に目が行かなくなれば、機会損失にもつながります。しかし、執着を手放すのは、なかなか難しいものです。どのように対処すればよいのでしょうか。
イギリス生まれのジャーナリストで投資家のマックス・ギュンターさんの著書『マネーの公理 スイス銀行家に学ぶ儲けのルール』(日経BP)の中に、ヒントがあります。
「もしもあなたが、損を抱えている投資にこだわりたいという衝動を乗り越えることができないのであれば、友人や伴侶、あるいはバーテンダーと話すことが助けになるかもしれない。いい映画やコンサートに出かけて、束の間でも問題を忘れることができれば、頭がすっきりするかもしれない」
(2)大き過ぎる欲が大損のもと
自分の買った株が上がり始めると、「もっと上がる」「もう少し待てば、もっと儲かるかも」と持ち続けてしまい、結局は反落して損をしてしまう、というケースがあります。
欲をかいたばかりに、売り時を逃してしまうのです。このような失敗をしないためには、どうすればいいのか。
マネー本の著者たちの意見をまとめると、
・常に冷静でいようと心がけること
・大儲けしようとしないこと
・損をしないうちに利益を確定すること
が大切です。
「熟練したトレーダーは、1回で1万ドルを狙うのではなく、1000ドルを10回狙うだろう。1000ドルの利益は1万ドルの利益よりは短期で低リスクで、そう、確実に手に入るだろう」(オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ『デイトレード』/日経BP)
(3)「失敗」は学びの機会
「失敗してお金を失うのが怖い。だから、投資はやらない」
「投資で一度失敗(損)をしたから、投資はやめる」
このような考え方は、お金を増やすのを難しくします。失敗をするのは当たり前と考え、失敗を乗り越え、バネにすることが大切だと多くのマネー本は指摘しています。
「失敗は社会大学における必須課目である。私は、この大切な課程を経たものでなければ本当に成功(卒業)ということはないと考えている。失敗の経験がないと誇ることは、すなわち、必須課目を修めていないと威張るようなもので、全く意味をなさないのである」(本多静六『私の財産告白』/実業之日本社)
「損をするのが怖いのはあたりまえだ。その恐怖はだれもが持っている。金持ちだって同じだ。問題なのは恐怖を持つことではなく、それに対する対処のしかただ。つまり、損をしたときにそれにどう反応するかが問題なのだ」(ロバート・キヨサキ『改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん』/筑摩書房)