タクシードライバー「2024問題」で収入減少の危機
給与の急回復で大喜びのタクシードライバーですが、ただその最大の要因は労働時間の増加にあります。全産業、男性の平均労働時間は2022年は月181時間。一方、タクシードライバーは186時間で、前年176時間から大幅に増えました。これは前述の通り、需要の回復によるもの。
もともと、タクシードライバーをはじめ自動車を運転手する職種は、厚生労働省による「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」が適用され、この範囲内で36協定を結んでいれば、一般的な場合を超える残業や休日出勤ができるようになり、労働時間は全平均よりも長めでした。
一方で法令を順守していないケースもたびたび問題になっています。たとえば隔日勤務がほぼ変形労働時間制の条件を満たしていない、拘束時間や休息時間が守られていない、など。一方で、タクシードライバーは普通に働いていては、全労働者平均の6割程度の給与。「もう、これ以上は働けねぇよ」といいつつも、本音は「稼ぎたい!」と長時間労働を受け入れることも多いといいます。
しかし来年4月から、タクシーやトラックなど自動車運転業務の時間外労働について上限規制が適用されます。タクシーの場合、「改善基準告示」が見直されて、2024年4月以降は日勤の1カ月の拘束時間が299時間から288時間となり、日勤の1日の休息期間は、継続8時間から「継続11時間を基本とし、9時間下限」となります。隔勤の場合は、休息期間が継続20時間から「継続24時間を基本とし22時間下限」と長くなります。
このような変更で懸念されているのが、いわゆる「2024年問題」。タクシー業界では営業時間の短縮により「タクシーがさらに減少する」といわれています。コロナ禍の影響で街からタクシーが減り、回復しないうちに、さらに営業車は減少。「タクシーが全然つかまらない」という事態がさらに深刻化するかもしれないのです。
もうひとつはタクシードライバーの収入の減少。労働時間が短くなれば、当然、給与もダウン。「タクシードライバーでは食うことができない!」と離職者が相次ぎかもしれません。もちろんすべての人が「稼ぎたい!」と思っているわけではないので、長時間労働の是正は喜ばしいことですが、元々低収入のタクシードライバー。さらに給与が減れば担い手も減り、それによりタクシーの台数も減少する……そんな負のスパイラルに陥ると懸念されています。
複雑に絡み合うタクシー業界の2024年問題。労働環境はもちろん、給与事情も改善してほしい……タクシードライバーの本音です。