新卒から定年退職まで勤めた場合、大企業なら2,000万円、中小企業なら1,000万円程度受け取れるという退職金。日本の企業のおよそ9割がこの制度を導入しているといいます。半数以上の人が、受け取った分配金を「預貯金」に回していますが、少なからぬ人が、この「種銭」を使って投資デビューを果たしているようです。今回は、金融機関が「毎月分配金が受け取れます」といって提案してくる投資信託の実態をみていきます。
退職金で〈毎月分配型〉投資信託を買った63歳・元大企業部長…“ゴルフ三昧”で過ごした1年半後、若手銀行員を怒鳴りつけたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

退職金の使い道第1位は「預貯金」

サラリーマンの多くは、60歳頃に定年退職を迎えます。そして、企業が定年まで頑張った従業員に支払うのが退職金。「退職手当」や「退職慰労金」などさまざまな名称がありますが、同じものです。

 

中央労働委員会『令和3年賃金事情等総合調査(確報)』によると、「退職金がある(退職一時金制度がある)企業」は89.7%。およそ9割のサラリーマンは定年退職時に、以下のような形で退職金を受け取ります。

 

①退職一時金制度:従業員の退職時に一括で退職金を支給する
②確定給付企業年金制度:従業員の退職後、一定期間に渡って退職金(年金)を支給する
③企業型確定拠出年金制度:企業が積み立てた掛金を従業員が年金資金として運用する
④中小企業退職金共済:従業員が退職後、積み立てた退職金が共済機構から支払われる

 

多くの人は、「退職金」と聞けば①をイメージするのではないでしょうか。それでは、退職金は実際どれくらいもらえるものなのか、みていきましょう。

 

一般社団法人日本経済団体連合会『2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果』によると、大学卒・総合職・60歳定年で2,440.1万円。高卒・総合職・60歳定年で2,120.9万円。大企業であれば、2,000万円強というのが1つの目安になりそうです。一方、東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)』によると大卒の定年退職で1,091.8万円。中小企業の場合、大企業の半分程度になりそうです。

 

一般社団法人 投資信託協会の『60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査(2021年(令和3年))』によると、退職金の使い道として59.3%の人が「預貯金」を挙げています。2番目以降には、「日常生活費への充当」(25.6%)、「旅行等の趣味」(21.7%)、「住宅ローンの返済」(20.8%)が続き、多くの人が堅実な使い方を志向していることがわかります。

 

そして使い道の5番目にランクインしているのは「資産運用のための金融商品の購入」。同調査によると、「初めて投資した年齢」として「60代」が17.8%に上ることがわかっています。「年金だけでは老後資金が2,000万円不足する」といわれていますから、退職金を大事に育てていこうと、定年退職してから投資デビューする人が多いようです。