忘れてはいけない「維持費」
注意が必要なのは、「維持費」です。タワマンに限らず、分譲マンションで暮らす人は月々の管理費や修繕積立金を支払うことになりますが、その費用は通常の分譲マンションに比べ約1.4倍にもなります。
タワマンにはコンシェルジュサービスやフィットネス施設、共用ラウンジ、パーティールームなどを備えているところも多く、それらの費用も管理費や修繕積立金に反映されるためです。一般的なマンションにもある管理人の人件費や共用部分の光熱費などに加え、タワマンには高速エレベーターや給水・防火設備などが必要なためメンテナンスに費用がかかります。
国土交通省の「マンション総合調査結果」(2018年度)によると、マンションの管理費はタワマンの場合、平均月額1万5,726円です。70m2であれば月額2万1,420円です。さらにマンションの改修や施設更新などの修繕に備えて毎月徴収される修繕積立金は平均で月額1万2,305円となり、70m2で月1万3,699円が必要となります。
合計すると毎月2万8,000円となり、70m2の部屋を保有していれば月3万5,000円程度です。もちろん、住戸数や共用設備の内容などによって異なりますが、毎月のコストが一般的なマンションと比べて高いのは間違いありません。
加えて、修繕積立金は築年数が増していけば毎月の支払額が増える可能性があります。先の「マンション総合調査結果」によれば、修繕積立金を増額したことのあるマンションは8割に上っています。古くなれば大規模修繕を行う必要があるからで、その増額幅の平均は1m2当たり64.3円。70m2の部屋であれば毎月4,500円程度の負担が分譲当初よりも増えることになります。ちなみに、築40年以上の分譲マンションは2021年末に約116万戸で、31年末には約249万戸、41年末には約425万戸になると推計されています。
相続税の評価減を狙った「節税」も、国が対策強化し今や…
タワマンの購入者の中には、相続税評価額と購入価額(時価)の差を利用した「節税」を狙う人もいます。マンションの相続税評価額は時価に比べて低く、時価の3割程度とされているからです。親が現金5,000万円を残していれば、それ自体が相続税の対象になりますが、分譲マンションを購入して残しておけば1,500万円程度となるため、相続税の評価減を狙った「節税」方法と考えられていたのです。
しかし、国はこうした対策の強化に乗り出しています。2022年4月には、死去3年前に購入されたタワマンについて、国税庁が実勢価格と申告された相続税との間に差があるとして追徴税を課した訴訟で、最高裁は国税庁側の勝訴としました。
管理費や修繕積立金は固定費です。マンションに住み続ける限り毎月支払う必要があります。住宅ローンを組んで購入した場合は月々の返済額も加わります。たとえ、退職金や貯金でローンを完済していたとしても、老後の年金収入で払い続けるのは大きな負担です。資産価値の値崩れが起きる可能性も考えれば、定年後もタワマンに住み続けるのはリスクとなるかもしれません。