へそくりも「相続財産」
【今回の事例】
父、母、長男、長女、次男の5人家族だったA家。すでに父は亡くなっています。長女・次男はそれぞれ家庭を持ち離れたところに暮らしていますが、長男は独身のまま実家に住み続け、年老いた母と2人暮らしでした。
このたび母が亡くなり、長男が遺品整理をしていたところ、母のタンスの奥から少し分厚い封筒を発見。中を見てみると、「現金65万円」が入っていました。
すぐに「母のへそくりだ」と気づいた長男でしたが、「少額だし、誰にもバレないだろう」と、そのままポケットへ。長女・次男にはなにごともなかったかのように接し、そのお金は少し贅沢なランチやギャンブルに消えていきました。
それから1年半が経ったころのことです。突然、実家に1本の電話がかかってきました。どうやら税務署のようです。
「〇月〇日、税務調査に伺いたいのですが」。
税務調査の結果、長男は「所得隠し」を行ったとして、追徴課税が課せられることに。
さらに、この税務調査で長男がネコババしていたことが兄弟にバレ、不仲に。「誰にもバレないだろう」という油断が、最悪の結末を引き起こしてしまいました。
自然災害などに備え、いわゆるへそくり(=タンス預金)をしている方は意外と少なくありません。
しかし、大前提としてタンス預金も相続財産の一部です。発見者は、タンス預金を見つけた際につい「誰にもバレないだろう」とネコババしてしまおうかと考えてしまうかもしれませんが、踏みとどまらなければなりません。
相続財産である以上は相続税申告の対象ですし、もしも相続発生前にそのへそくりをもらうのであれば、場合によっては贈与税申告をする必要があります。
今回の事例においても、65万円と「少額であればバレないだろう」と思いがちですが、税務署はお金の流れを必ず確認しています。
もし亡くなられた方の収入や預金残高のバランスに違和感がある場合、相続人の方の預金残高や入出金の履歴などすべてチェックされ、場合によってはのちに税務調査の対象となる可能性もあります。
したがって、少額だからといってネコババしてしまうのは非常に危険です。