連日、ニュースを賑わせているビッグモーターの不正請求問題。これはこれで大問題ですが、大きく取り上げられているのは、むしろ、同社で横行していたパワハラの数々です。目を背けたくなるような悪質なものばかりですが、氷河期世代のなかには、少々変わった受け止め方をしている人も。みていきましょう。
【ビッグモーター】パワハラ報道に「昔は普通だったよね(笑)」…エリートから転落した〈氷河期世代〉の何とも哀しい現実 (写真はイメージです/PIXTA)

パワハラ報道に昔を懐かしむ、氷河期世代

2005年に大学を卒業した人たちは、今年41歳。1993年に大卒なら今年53歳。氷河期世代といっても10以上の年齢差がありますが、誰もが「あの頃は大変だったよね」という話で盛り上がれるはず。

 

そして昨今、氷河期世代の間で話題になっているのが、世間を賑わせているビッグモーターの不正請求問題に端を発した数々の報道。そのなかでも強烈なパワハラへのコメントが多いようです。

 

――(一連のパワハラは)いまの子たちにはドン引きかもしれないけど、昔はあんなの普通だったよね(笑)

 

パワハラを糾弾するというよりも、昔を懐かしむコメント。それに対して「そう、そう」と氷河期世代同士は共感しあうことが多いようです。

 

正社員になりたくてもなれなかった就職氷河期。希望しない業種や職種でも「正社員になれるだけまし」と就職。当時は正社員になれるだけでもエリートだったのです。

 

しかし時代は圧倒的な買い手市場。また今のように法整備もされてなかったので、「いやなら辞めてしまえ!」という上司からのしっ責は日常茶飯事でした(もちろん、俗にいうホワイト企業も多くありました)。せめてもの救いは、いまほどメールやSNSで上司と繋がることはなかったことでしょうか。

 

それでもパワハラに耐えきれず退職。泣く泣く正社員のポジションを捨てるしかなかった氷河期世代も大勢いました。そのような人は、そのあとどのような人生を歩んだのか……違う会社へ正社員として転職できた人もいれば、正社員としての道は閉ざされ非正規社員として再スタートをきった人も。なかには、パワハラ→退職をきっかけに、引きこもりとなりいまに至る人もいます。

 

内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)』によると、引きこもり状態にあるのは、「15~39歳」で2.05%、「40~64歳」で2.02%、全国で約146万人と推計されるといいます。

 

引きこもり状態になった理由で多いのが、「40~64歳」では「退職したこと」で44.5%。そして、10年以上にわたり引きこもり状態にある人が多いのも特徴です。強烈なパワハラにより、精神的に傷を負ってしまったなど、再起を図ろうにも図れない状態の人たちも多いのです。

 

そんな彼らを支えているのは、高齢になった親というケースが多く、今後、支えを失ったときに共倒れになると危惧されています。しかし問題視されていても、なかなかサポートが行き届いていないのが実情。当の本人もすでに40代から50代。再起を図るにしても、それほど時間の猶予はありません。