「580億円分の仮想通貨」が不正流出…2018年Coincheck騒動の根本原因

「580億円分の仮想通貨」が不正流出…2018年Coincheck騒動の根本原因

Coincheckは、電気料金の支払いなど、ビットコインを日常的に利用できるサービスを提供し、他の取引所と一線を画すことで、大手の取引所へと成長していきました。ところが2018年1月26日、Coincheckから仮想通貨「NEM(ネム)」が、約580億円分不正に流出したことが発覚しました。この失敗の根本原因は一体なんだったのでしょうか? 本記事では、特定非営利活動法人失敗学会理事の佐伯徹氏の著書『DX失敗学 なぜ成果を生まないのか』より、データをもとにCoincheckのDX失敗原因について紐解いていきます。

失敗原因を考察 

それでは失敗の原因をリストアップしていく。

 

「ITプロジェクト版失敗原因マンダラ図」から全ての失敗原因を抽出する

※「ITプロジェクト版失敗原因マンダラ図」とは…筆者が所属している失敗学会は、失敗の原因を構成する要素を分類して関連を階層ごとに図示した「失敗まんだら」を提唱している。仏教で悟りの世界や仏の教えを示した図絵である連関図にヒントを得て、失敗原因に関わる全ての要素や関連、位置づけを一覧できるようにしたもの。この失敗まんだらをITプロジェクト向けに改変したもの。

 

[図表2]失敗の原因を検討したものを一覧化したイメージ・その1

 

[図表3]失敗の原因を検討したものを一覧化したイメージ・その2

 

[図表4]失敗の原因を検討したものを一覧化したイメージ・その3

 

以上、全ての原因について考察したあと、「ITプロジェクト版失敗原因マンダラ図」に丸をつけてみると下記のようなイメージ図となる。下図のように20項目が選定される。

 

[図表5]ITプロジェクト版失敗原因マンダラ図

 

真の失敗原因を特定する

 

[図表6]ステップ3で討議した内容を連関図としたイメージ

 

<直接的な問題点> 

利便性・コスト面から仮想通貨の管理方法をホットウォレットと していた。ホットウォレットとはインターネットに接続したまま保管する仮想通貨の保管法で、利用が簡単なのが特徴。しかし、ネットにつながったままなので、不正アクセスの危険とは隣り合わせになる。ネットから切り離して管理するコールドウォレットという方法を使う取引所もあった。

 

■筆者が考える今回の問題点

①法整備が整っていない状態での新たなサービス利用であるのに、安全が軽視された。【安全意識の不良】

 

②リスクなど問題が発生した場合に備えコンティンジェンシープランを策定した上で、どのリスクにコストを配分し、注力していくかについて、十分な議論がおこなわれてない。【想像力不足】

 

③ブロックチェーン技術はまだまだ発展途上であるとの認識で、一つひとつセキュリティーを考慮しながらシステムを構築できなかった。【標準化不足】

 

■筆者が考える対応策

①法整備が整っていない状態での新たなサービス利用は、安全が軽視される傾向にあるため、常に利用者側に不利益があると想像して利用しなければならない。

 

②ブロックチェーン技術は100%セキュリティーが確保されていると言われていたが、現実に不正が行えることが証明されたことで、常にセキュリティーが100%確保されているものはないという意識で利用すること。

失敗の根本原因は「技術力の過信」

今回、メディアに掲載された内容から「ITプロジェクト版失敗原因マンダラ図」で真因を考察した結果、MTGOXと同様に自社のインターネット技術を過信しているように感じた。現在世間で流行しているマルウエアやランサムウエアでも同じことが言えるが、インターネットを利用する人口は全世界に広がっているのである。

 

ということは、自分とは全く違う思考(悪い思考も含めて)も何十億ケースもあるということ。なので、自分が考えつかないセキュリティーリスクを突いてくることは<当たり前>と考えてプランを立てなくてはならない。また、定期的にリスクを再チェックして新しいリスクを見出すためにプロジェクトメンバーとはベルの組織を編成(第三者を含む)することを勧める。

 

 

佐伯 徹

特定非営利活動法人失敗学会

理事

 

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