無年金の高齢者、50万人以上という現実
いまの日本は、公的年金だけで生活するのはかなり大変だ。国民年金を満額収め、なおかつ会社員や公務員として勤務してきた実態がある人でも決して楽ではない。もちろん、一時的に失職するなどしていた場合は、その分厚生年金が減額される。
「そうはいっても、日本人は国民年金に強制加入だし、金額に不満はあったとしても、高齢者はみんな年金を受給しているでしょう?」
そのように考えている人もいるかもしれないが、厚生労働省の調査によると、日本の無年金者は50万人以上存在する。65歳以上人口が3,600万人といわれていることから、計算すると「無年金率」は1.3%だ。高齢者の100人に1人が「年金ゼロ円」なのである。
◆年齢別「年金収入なし」の人数
65~69歳:26,108人
70~74歳:29,993人
75~79歳:153,699人
80~84歳:125,911人
85~89歳:93,784人
90~94歳:55,914人
95~99歳:30,132人
100歳~:6,262人
出所:厚生労働省『令和3年度 後期高齢者医療制度被保険者実態調査』より
厚生労働省によると、厚生年金受給者の平均年金額は14万5,665円、国民年金受給者は平均5万6,479円だ。これが老後の生活資金の基盤となるわけだが、もしそれがゼロであるとしたら、一体どうやって生活しているのか。預貯金や不動産収入のある富裕層ならともかく、想像するだけで不安になってくる。
日本国内に居住する20歳以上60歳未満は、国民年金に加入する義務があるわけだが、年金保険料の払込期間が10年(=120ヵ月)以下の場合は国民年金が受給できない。
「無年金の人」が無年金になった理由として考えられるのは、
●困窮のため保険料が払えなかった
●海外生活が長く、保険料を払う機会がなかった
●そもそも保険料を払う意思がなかった
という3パターンに集約されるだろう。
だが国民年金は、60~70歳までは任意加入することができる。もし払込期間が足りないのであれば、利用するのも手だ。
「無年金」の恐怖…高齢者と現役世代、それぞれの対策は?
昭和36年4月~昭和61年3月までは、国民年金への加入は任意だった。そのため、いまの高齢者には無年金の人が多いとされている。その後、国による対策が奏功し、無年金者は徐々に減少しているといわれているが、一方で、いまの現役世代には別の問題が生じている。
2023年度の年金額について、6月に支給される分からは増額となっているのだが、当時の報道によると、物価の影響などを加味すると、実質的な年金の価値は減額なのだという。この「年金額は増額、でも実質的には減額」というパターンは今後も続く可能性もあるのだ。
また、年金を受け取り始める時点(65歳)における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かを示す「所得代替率」は、2040年代に2割減となる予測もある。つまり「現在の年金水準より2割減額」になることを、覚悟しておく必要があるということだ。
なかには「将来、年金はゼロ円になる」という声もあるが、それは極論にしろ、恐るべきスピードで進展する少子高齢化の現状を考えれば「もしかすると…」という不安はぬぐいきれない。
現状において、年金も蓄えもない高齢者の場合はどうすればいいのか? この場合、できることは3つだ。まず、健康なら働いて収入を得る。もし厚生年金に加入できれば、その分、年金を手にする可能性も高くなる。そして、恥ずかしがらずに生活保護を受けること。受給条件を満たすことが必要だが、承認されれば、最低生活費と収入の差額分の支給が期待できる。あるいは、親族に頼る方法もある。子どもが同居して親を扶養してくれるなら、子どもも扶養控除を受けるというメリットにあずかれる。
万一の無年金におびえる現役世代の場合は、時間を味方にして、資産形成を進めるのが最善だ。資産形成に関する制度は年々充実している。長期的にライフプランを考えるなら、つみたてNISAやiDeCoなどを活用するのもよい方法。もちろん投資である以上、元本割れのリスクもあることは念頭に置いておこう。
総務省『家計調査 家計収支編(2022年)』によると、65歳男性単身者の1ヵ月の消費支出は、14.8万円。単純計算、80歳まで年金に頼らず生きるには、2,800万円程度の貯蓄があればなんとかやっていけることになる。85歳までなら3,700万円、90歳なら4,600万円、100歳なら6,400万円と、必要額は上がっていくが、年金に頼らず生きていけるだけの資産形成ができれば、老後の不安は大きく軽減できるはずだ。
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