会社を選ぶときに、何を重視しますか? 経営が安定している会社、職場の雰囲気が良いところ、給与がいいところ……“やりがい”を重視して、会社の規模が小さくても構わないという人も多いでしょう。ただ給与を二の次にした際に生じる給与差をしっかりと理解しているかが重要です。
月収35万円・中小企業勤務の43歳サラリーマン…定年まで働いて気づく大誤算「何かの間違いでは」 (写真はイメージです/PIXTA)

大企業勤務か、中小企業勤務か…ライフスタイルにも明確な差が生じる

「やりがいのある仕事をしたい」と高い志を持っていても、挫折してしまいそうな給与格差。さらに心が折れてしまいそうな事実をもうひとつ。

 

総務省『家計調査 貯蓄・負債編』(2022年平均)で、勤労世帯における貯蓄額を勤務先の企業規模別にみていくと、中小企業勤務世帯の貯蓄額は平均1,239万円、負債額は628万円、貯蓄額から負債額を引いた純貯蓄額は611万円。一方、大企業勤務世帯の貯蓄額は1,775万円、負債額は1,075万円、純貯蓄は700万円。貯蓄額では1.4倍差。負債額は大企業勤務の場合のほうが多いので、純貯蓄額は100万円程度の差となります。

 

――なんだ、大企業だろうが、中小い企業だろうが、資産額に差はほとんとないじゃん!

 

そう思うかもしれませんが、負債額の差はほぼ住宅ローンによるもの。つまり大企業に勤務するサラリーマンのほうが“いい家に住んでいる”ことは明らか。大企業勤務か中小企業勤務かで、ライフスタイルに分かりやすいほどの格差が生じるわけです。このような状況を前に「中小企業を選んだことに1ミリも後悔はない」と言えたなら、大したものです。

 

大企業勤務と中小企業勤務…格差は一生続く

60歳の定年時に手にする退職金は、大企業平均で2,000万円、中小企業平均ではその半分の1,000万円。これらを加味した生涯賃金は、中小勤務を貫いたサラリーマンはちょうど2億円強。対して、大企業は3億円強。

 

やりがい重視で中小企業にこだわってきたサラリーマンが、60歳定年時に知る、1億円もの給与格差。あまりの生涯年収の差に「えっ、何かの間違いでは?」と疑ってしまいそうです。

 

さらに共に60歳で定年退職したとして、65歳から手にする年金額を考えてみると、中小企業勤務のサラリーマンであれば老齢厚生年金は8.9万円、老齢基礎年金と合わせると月15.5万円ほどとなります。一方、大企業勤務のサラリーマンは老齢厚生年金が12.5万円、老齢基礎年金と合わせると月19.1万円ほどになります。

 

月3.6万円と現役時代ほどの収入差ではありませんが、この差は一生もの。1年で43万円、10年で430万円、20年で860万円、30年で1,300万円……長生きすれば長生きするほど、格差を実感することになるのです。

 

大企業と中小企業の埋めることのできない給与差。昨今の賃上げの動きからも分かる通り、その差は今後ますます広がっていくと言われています。それでもなお「やりがいのある仕事をしたい」と、給与を二の次に考えられるのであれば、高給を得る以上に幸せな会社員人生が送れるといえるでしょう。