会社を選ぶときに、何を重視しますか? 経営が安定している会社、職場の雰囲気が良いところ、給与がいいところ……“やりがい”を重視して、会社の規模が小さくても構わないという人も多いでしょう。ただ給与を二の次にした際に生じる給与差をしっかりと理解しているかが重要です。
月収35万円・中小企業勤務の43歳サラリーマン…定年まで働いて気づく大誤算「何かの間違いでは」 (写真はイメージです/PIXTA)

中小企業と大企業…埋めようがない給与格差

来年(2024年)春に卒業する大学生などを対象にした企業の採用面接は、6月1日から解禁となりましたが、この時点で就職内定率は7割超え。高い内定率は人材不足を背景に採用活動を前倒しして行う企業も増えていることが要因だといわれていますが、激しさ増す新卒の獲得競争に初任給の引き上げで採用の拡大を狙うケースも増えています。

 

ただそのような対応ができるのは、資金面で余裕のある大企業に限られます。それでも、あえて中小企業を選ぶ人たちも珍しくありません。東京商工会議所が行った『2019年度中堅・中小企業の新入社員の意識調査』によると、中小企業をを選んだ理由で最も多かったのが「仕事の内容がおもしろそう」で42.6%。続いて「職場の雰囲気が良かった」が39.8%、「自分の能力・個性が活かせる」が35.5%と続きました。もちろん大企業から内定をもらえなかった、という事情の人もいるでしょうが、仕事内容ややりがいを重視して中小企業への入社を決める人が多いことが分かります。

 

――仕事は給料よりもやりがいだろ!

 

そういきり立っていた学卒社員が、いつまでその調子でいられるか。給与面からみていきましょう。

 

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、中小企業(従業員10~99人)勤務の大卒サラリーマン(平均年齢43.6歳)の平均給与は、月収で35.1万円、年収で531.2万円。対する大企業(従業員1,000人以上)勤務(平均年齢41.9歳)では、月収で44.3万円、年収で769.6万円。平均値で比較しても大きな給与差が生じていることが分かります。

 

さらに年齢ごとにみていくと、まずは大学を卒業して間もない20代前半。中小企業(従業員30~99人)に勤務するサラリーマンの月収は22.7万円、年収は318.5万円。一方で大企業(従業員1,000人以上)のサラリーマンは月収が24.1万円、年収が369.9万円。すでに年収で50万円ほどの差がついているものの、格差を実感するほどではないかもしれません。

 

そして、大学を卒業して10年。30代になった中小企業勤務のサラリーマンの給与は、月収29.7万円、年収で459.2万円。もうすぐ年収が500万円台! といったときに、大企業勤務のサラリーマンの月収は35.0万円、年収は630.5万円。100万円以上の年収差が生じています。ここまで来ると「年収差を意識しない」というのは無理があります。

 

そして大学卒業から20年。「お前もすっかりおやじだな」などと同期と言い合う40代。中小企業を選んだサラリーマンは、月収39.7万円、年収で571.9万円。年齢とともに順調に給与は上がり月収は40万円直前といったときに、大企業勤務のサラリーマンの月収は46.3万円、年収は809.2万円。年収差は実に237.2万円。さらに50代にもなると、年収差は300万円オーバーになります。

 

このような状況を前にして、いつまで「仕事はやりがいだろ!」と強がっていえるでしょうか。