遺言書の効力は「強力」、しかし…
相続が発生した場合、まずは亡くなった方の遺言書があるかどうかを確認します。
この遺言書に、本記事の事例のように「預金1,000万円は長男へ、自宅は愛する妻へ」というような記載があった場合、原則としては遺言書どおりに分けることになります。それくらい、遺言書には強い効力があるわけです。
しかし、遺言書があるからといって分割方法を絶対に変えることができないのかというと、決してそうではありません。相続人のあいだで話し合い、合意ができるのであれば、遺言書どおりに分ける必要はありません。
今回の事例でいうと、妻が「自宅はいらない。預金がほしい」と言った場合、長男と話しあい、合意がとれれば可能となるわけです。
遺言書があっても分割方法は変更可能
遺言書が作成されている場合、「その内容を変えることはできない」と考えている方も多いですが、相続人全員の合意という条件が揃えば、遺言書と別の内容で遺産分割が可能です。
もし、遺産分割協議を行っても相続人全員の合意がとれない場合は、「調停申立」を行います。この調停もまとまらないようであれば、「審判分割」となり裁判所が強制的に決定していくこととなりますが、この決定の際に大きな材料となるのが遺言書です。遺言書の存在はやはり大きいものとなります。
現金と不動産、どっちを相続したほうがおトクなの?
もし、遺産分割において遺言書とは異なる内容で相続人全員の合意がとれるとして、相続財産として「預貯金」と「不動産」がある場合、どちらを相続したほうがいいのでしょうか。
これは司法書士である筆者もよくいただく質問なのですが、一概にはどちらということはいえません。節税や相続後の活用方法、遺産分割のしやすさなど、さまざまな角度からメリット・デメリットを判断する必要があります。
「費用としてどちらがおトクか」というと、基本的には「不動産」を相続したほうがおトクです。現金の相続時に課せられる税率と、不動産の相続時に課せられる税率には大きく差があるため、不動産を相続するほうが現金を相続するよりも相続税を節税することができます。
ただし、これは節税の面だけを考えた場合です。遺産分割協議のしやすさや、相続後のトラブルの起きにくさを考えた場合は、実は「現金」のほうがおトクといえます。
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