都内で生まれ育った35歳の米田さん。2人の子どもに恵まれ、実家近くに持ち家を所有。世帯年収は1,000万円です。一見すると恵まれた環境に身を置く米田さんですが、本人は「生活は大変」「この国に期待できることはない」と嘆きます。いったいなぜなのでしょうか。『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』(講談社現代新書)の著者でジャーナリストの小林美希氏が取材しました。みていきましょう。
年収348万円、世帯年収1,000万円の35歳女性が「クーラーもつけない生活」で日本に絶望する理由【ジャーナリストの実録】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「この国に期待できることはない」…米田さんが感じた日本への絶望

夫の想像する子育てロードマップはすべて公立の中学、高校が前提となっているようです。でも、行かせることができるなら、留学させてあげたい。日本にいても、もう、何を期待できるのでしょうか。公教育が無償なら、どんなに助かるかと思います。

 

毎月配られる小学校のおたよりで、教材費やPTAの会費の引き落としの金額が案内されます。日本の公教育って無償じゃないなと、毎月、思い知らされます。

 

PTAだって必要なんですか? わざわざ有給休暇をとってPTA活動に出て、やっているのはただのおしゃべり。PTAなんて廃止すればいいのに。やりたい人だけやればいいのに。同調圧力がすごすぎますよね。

 

今から教育制度が変わったとしても、わが子の代には間に合わない。結局、島国の敗戦国を生き続けている気がするのですが、そんなこと言ったら「左」って言われそうで言えません。こんな話はママ友とはできないんです。

 

プチ家出しちゃう職場の同僚と、けっこう真面目に話をするんです。世界と比べて日本の賃金が横ばいで、でも商品は消費されずに、あふれかえっている。そこだよ! 支払う場面ばかり増えて、収入は増えない。

 

これからは銀行預金だけでは資産は増えませんよと、やたらNISA(少額投資非課税制度)とか煽られて、気持ちがぐらぐらしちゃうけど、なんだか腑に落ちないよね、って。

 

それなりの年収があったからといって、決して生活は楽ではない。むしろ、大変ですよ。なんで、こんなに大変なんだろう。やっぱり、「自分は下のほうで生きている」という感覚から逃れられないんです。

 

 

小林 美希

ジャーナリスト