賃上げニュースのあとに話題になったのが「夏のボーナス」。コロナ禍からの回復により伸び率は鈍化したものの、平均で2年連続の増加。そんな民間企業に対して公務員も昨年の減少から一転、増加に転じたと大きく報じられました。しかし喜ばしい状況だけではないようで……みていきましょう。
平均給与44万円…国家公務員、3年ぶり夏のボーナス増も「もう、限界です」 (写真はイメージです/PIXTA)

働き方改革が進まず…東大生「官僚離れ」加速

一方、株式会社フリーウェイジャパンが中小・零細企業の社員140人、代表取締役115人を対象に行った『2023年度 夏のボーナス実態調査』によると、夏のボーナスの支給済・支給予定は全体の31.3%で、昨年より11.7ポイントの減少。またボーナス支給額は平均44.1万円でした。

 

日本を代表する大企業ほど多くはないが、中小企業ほど少なくもない、という国家公務員のボーナス事情。羨ましいと思うかどうか、正直、微妙な水準です。

 

国家公務員を始めとした公務員は、とにかくその安定性が魅力。また国家運営に携わるという重責を担う、いわゆる“官僚”はエリート中のエリートで、なれるものならなってみたい職業のひとつでした。あくまでも過去形で、昨今、人気は下降気味。

 

人事院『2023年度国家公務員採用総合職試験(春)の合格者発表』で出身学校別の合格者数をみていくと、トップは「東京大学」で193人。「京都大学」「北海道大学」「早稲田大学」「立命館大学」と続きます。「さすが、東京大学!」といったところですが、昨年と比べて24人減。10年で6割ほども合格者が減っています。(関連記事:『【大学ランキング】国家公務員試験合格者数…2023年<国家公務員採用総合職試験(春)>』

 

これは「東京大学の凋落」ではなく「東京大学の官僚離れ」が正解。以前は「東大は官僚養成学校」などと揶揄する人もいましたが、そのようなイメージは薄れ、東大生の就職人気NO.1は、平均給与は1,000万円を超えるとされる、外資系コンサルティング会社となっています。

 

一方で国家公務員の平均給与は本府省勤務で44万8,153円(人事院『令和4年国家公務員給与等実態調査』より)。官僚と外資系コンサルティング会社……比べるまでもないほどの給与差が生じています。

 

――やはり金か

 

確かに、そういう考えの学生もいるでしょう。しかしそれよりも問題視され、公務員離れを生むきっかけとなったのが、国家公務員の労働環境。特に国会対応の多い官僚ともなると、国会開催中、霞が関の省庁は不夜城となり、まったく自宅に帰ることができないというケースも珍しくありません。

 

国家公務員の超過勤務については、2019年4月から超過勤務を命ずることができる上限を設定する一方で、大規模災害への対処等の重要な業務であって特に緊急に処理することを要する業務に従事する職員に対しては、上限を超えて超過勤務を命ずることができるとしました。

 

2020年、各府省において上限を超えた職員についてまとめたところ、本府省の他律的業務の比重の高い部署では25.2%。また100時間未満の上限を1ヵ月超えた職員は13.8%、2~6ヵ月平均80時間以下の上限を超えた職員が18.1%となっています(人事院『令和4年人事院勧告』より)。

 

また先日、人事院が発表した『令和4年度過労死等の公務災害補償状況』によると、国家公務員の過労死等について、脳・心臓疾患に関する事案の協議件数は5件(昨年0件)、認定件数は2件(昨年0件)。さらに精神疾患等に関する事案については、協議件数は25 件(昨年23 件)認定件数は9件(昨年10 件)でした。認定された事案を「業務負荷の類型」別にみると、「パワー・ハラスメント」が6件、「仕事の内容」が2件、「職場でのトラブル」が1件でした。

 

民間企業ほど「働き方改革」が進んでいないと評価される国家公務員。「もう限界……」「もう無理だ……」という悲痛が、とりわけ官僚の世界から聞こえてくるなか、公務員離れが進んでも仕方がないことかもしれません。

 

そもそも、業務上、国家公務員の長時間労働の是正は難しいという指摘も。それであれば、民間企業を上回る給与や賞与を約束するしかないかもしれません。そうなったとき、果たして私たちは「重責担う官僚なら仕方がない」と納得できるかどうか……それもまた難しい問題です。