長寿化や高齢化の進展で、避けては通れない介護問題。親の介護で離職を選択する人も少なくありません。介護離職による影響は、いまの生活だけではなく老後の生活にもあるようで……。本記事ではCFPの伊藤貴徳氏が、Aさんの事例とともに、介護と家計のバランスについて解説します。
世帯年収950万円の40歳共働き夫婦、母の介護で「収入激減」さらに「年金も激減」…目の前が真っ暗の悲惨【CFPからの救済策】 (※写真はイメージです/PIXTA)

40歳の同い年夫婦、母の介護で妻が離職へ…

Aさんは40歳。ご主人とは同い年で、中学生と小学生のお子様が2人います。関東の都心からは離れた場所で、Aさんの実家の敷地に戸建てを構えお住まいです。同じ敷地内にはAさんのご両親の住まいもあり、なにかあれば顔を出すことのできる、互いに程よい距離感で生活をしていました。

 

ところが数年前にAさんのお父様が他界してからというもの、健康だったお母様の体調はみるみる変化していき、とうとう日常生活に支障が出てくるようになりました。市町村からの認定は要介護3。入浴・食事・排泄などの日常行為に介助が必要な状態となり、Aさんが日常的に介護をするまでに。

 

もともとお互いの住居が近く、なにかあればAさんがすぐ駆けつけることができるため、初めは少し日常生活の面倒をみる程度でしたが、お母様の体調が変化するにつれてAさんの負担は増えていき、やがて1日のほとんどを介護に費やすようになります。

 

Aさんは、普段は正社員の事務員としてお勤めです。当初は有給を取得したり、残業を抑えたりするなどで、なんとか仕事と介護の両立を図ってきましたが、どうにも立ち行かなくなり、ついには仕事を退職することになりました。

 

これから続く介護への不安はありましたが、介護の度に母から漏れる「いつも、ごめんね」の言葉に、Aさんは「自分がなんとかしなければ」と奮い立たされます。家族もそんな姿を見ているため、家事に協力的です。

 

しかし、ふとこんなことを思います。

 

「このまま、介護が続くと、我が家はこれからどうなってしまうんだろう」

 

Aさんは職場を退職し、現在はご主人の収入のみで家計をやりくりしています。お子様は中学生と小学生。これから教育費が本格的にかかってくる時期です。加えて、昨今の物価高。1〜2年前と比べると、明らかに貯蓄残高が減ってきているのがわかります。

 

「……介護をしていると、ふと自分たちの将来を重ねてしまうときがあるんです」とAさん。

 

もし、このままの生活が進んだ場合、我が家はどうなってしまうのか。不安を抱え、筆者のもとへ相談にやってきたAさん夫婦。将来の年金額シミュレーションを行い、今後について一緒に確認することにしました。