仕事のストレスから転職を検討
都内で働くAさんは、システムエンジニアとして働いています。一緒に住んでいる妻とは25歳のときに結婚しました。中堅のIT企業で、月収は45万円。プロジェクトの設計や実装、トラブル対応を担当していました。半年ほど前からチームの中心となって進行管理を担うことも増え、Aさんはその役割に誇りを持っていました。しかし、プロジェクトの締め切りが近づくと、連日遅くまで働く日々が続き、朝通勤のために電車に乗ると吐き気を催し途中下車したり、夜は眠れなくなったり、次第に体力も気力も限界に近づいていました。
このままシステムエンジニアとして働き続けるかどうか、自分自身に問いかけながら、Aさんは少しずつ転職を考え始めていたのでした。
人生の中休みを決断
そんなとき、学生時代からの友人であるBさんと久しぶりに会う機会がありました。Bさんは、数年前に地元で居酒屋を立ち上げ、いまでは常連客も増え、順調に経営を続けていると聞いていました。
Aさんが「最近、ちょっと仕事がしんどくてさ……」とぼやくと、BさんはAさんの疲れた顔を見て、「そんなに大変なのか?」と心配そうに声をかけてきました。それを聞いたBさんは少し考え込み、「それなら、うちで働かないか?」と提案が。
Aさんは驚きつつも、「え、居酒屋で? そんなこと急に言われても……」と戸惑いを隠せません。しかしBさんは続けて、「うちは1人でやってる店だから、最近忙しくなってきて、人手が増えると本当に助かるんだ。お前ならお客さんとも上手くやっていけると思うし、なにより、長年の友達と働くのって、ちょっと面白そうじゃないか?」と笑顔で誘ってくれました。その言葉に、Aさんの心は少しずつ動かされました。
Bさんの店は地元に根ざしたアットホームな居酒屋で、学生時代からの知り合いである彼と働くのは、人生の中休みのように肩の力を抜いて、楽しめるかもしれないと感じたのです。それからAさんは数ヵ月かけて妻を説得し、システムエンジニアを辞めてBさんの居酒屋で働くことにしたのでした。