昨年の児童手当見直しに伴い、子育て世帯が直面している「年収1,200万円の壁」。子育て世帯にはどのような影響があるのでしょうか。本記事では、CFPの伊藤貴徳氏が、Aさんの事例とともに「年収1,200万円の壁」について解説します。
子2人抱えた40歳夫婦の悲鳴…“年収1,200万円の壁”のエグい正体「なんだか腹が立ってきた」【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

子育て世帯を苦しめる「1,200万円の壁」

AさんはIT企業で働く40歳のサラリーマンで、年収は1,200万円です。奥様はパートタイムで働きつつ、主に家事や子育てに専念しています。小学生のお子様2人の4人家族です。都内のマンションを数年前に購入し、お子様は2人とも私立の小学校へ通わせていることもあり、これからが頑張りどころと話すAさん。

 

そのようななか、今回、筆者のもとへ相談に来た理由は意外なものでした。

 

「現状、いまの生活を維持するのがやっとで、決して裕福な生活ができているわけではありません。むしろ、社会保険料や税金が多くかかったりと、生活費や教育費を引いたあとに手元に残るお金は意外とこんなものか……という感じです。個人的には子供は3人欲しいですが、もう1人増えるとやっていけるか心配です」

 

一見、生活状況に問題はないように思えますが、都内のマンションに住み、2人の子供を私立の小学校に通わせるとなるとそれなりに生活費がかかります。加えて、こんな状況にも。

 

「頑張って働いて、少しでも家族を支えようと思うと、逆に児童手当がもらえなくなってしまう。ちょうど、私の収入が『1,200万円の壁』のあたりなんですよね。周りでは児童手当を受け取りながら育児をしている家族がほとんどですが、私たち家族にも子供が2人いるのに、働くことで手当から外されてしまうなんて!」

 

Aさんは悲鳴をあげます。子育て世代であれば受け取ることのできる児童手当ですが、なぜAさん家族は自動手当を受け取れないのでしょうか。ここからは「児童手当」と「年収1,200万円の壁」について確認していきます。

児童手当の支給制限

児童手当とは、子供を育てる世帯に対して、子供1人につき定められた手当が支給される制度です。月額は子供の年齢や、世帯年収によって変わります。

 

<支給額>

 

児童の年齢が3歳未満:1万5,000円

3歳以上小学校終了前:1万円(第3子以降1万5,000円)

中学生:1万円

 

Aさん家族を例にしてみましょう。

 

Aさん:40歳

妻:40歳

お子様:10歳(1万円)

お子様:8歳(1万円)

 

Aさん家族の場合、通常であれば1ヵ月あたり2万円の手当を受け取ることができます。この手当は中学校卒業まで受け取ることができますから、累計するとお子様2人で約400万円の児童手当を受け取ることができます。しかし、Aさん家族はこの手当を受け取ることはできません。この児童手当には所得制限があるためです。

 

児童2人を扶養する場合、約920万円以上の収入となると児童手当の支給額は一律5,000円となり1,200万円以上となると支給は停止となるからです。この所得上限限度額は令和4年の10月から開始となり、これが「1,200万円の壁」といわれています。