【収益不動産共有の大問題】「使えない子ね!」50代長女の圧力に「もう限界」…おとなしい40代二女がとった問題解消の〈ウルトラC〉

【収益不動産共有の大問題】「使えない子ね!」50代長女の圧力に「もう限界」…おとなしい40代二女がとった問題解消の〈ウルトラC〉
(※写真はイメージです/PIXTA)

親族から棚ボタで相続した好立地の貸店舗。高齢の母と中年の娘2人は、この不動産を共有し、なかなかの収益を得ています。しかし、今後の相続を見据えると問題は山積。それ以前に二女が危惧していたのは…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、相続の観点から解説します。

親子3人で共有する貸店舗、いい収益になるが「不安」も…

今回の相談者は、40代会社員の伊藤さんです。所有している収益不動産の件で相談したいと、筆者のもとを訪れました。

 

「私は、80代の母と50代の姉の3人で、貸店舗を共有して収益を得ています。収益は3人で等分に分けているのですが…」

 

貸店舗はもともと、母親の亡くなった姉の所有でしたが、姉には子どもがなかったことから、伊藤さん親子に遺贈された経緯があるそうです。

 

店舗は都市部の駅近という好立地にあり、それなりの家賃を得ることができます。しかし、伊藤さんには不安があるといいます。

 

「いまはまだ母が元気なので、とくに問題はありません。ですが、これから先、母が亡くなってしまったら、姉と一緒にうまくやっていけるかどうか…」

 

伊藤さんの話によると、姉は勝気で仕切りたがりの性格で、ときには激しく当たり散らすこともあるとのことでした。伊藤さんとはあまり性格が合わず、いまは母親が間に入ることで、関係を維持している状態です。

 

現在の賃貸事業は、基本的に母親が仕切っていますが、さまざまな管理や手続きは姉が率先して代行し、伊藤さんはタッチできません。そのような状況でありながら、姉からはしばしば「役に立たない子」「使えない子」等の暴言があり、気持ち的にも限界です。なにより、母がいなくなったらどうなるのか、いまから不安です。

 

また、木造の建物の一部には、修理が必要な個所もあり、今後さらに老朽化が進めば、修繕費や維持費の問題も避けて通れません。

今の段階で「共有解消に踏み切る」方法も

筆者と提携先の弁護士で伊藤さんの話をじっくりと聞いたところ、大きな課題として、今後の不動産の共有をどうするかという問題はありますが、それよりも、母亡きあとも貸店舗を通じてずっと姉と接点を持ち続けることに、負担と不安を感じていることが伝わってきました。

 

賃貸物件の共有は、経営上のトラブルになりやすいだけでなく、今後の相続においても問題となります。実際、相続で話がこじれ、大変な状況になってしまう方も少なくありません。

 

「この機会に、共有を解消してはいかがでしょうか?」

 

弁護士からの提案に、伊藤さんは心を動かされたように見えました。

 

「具体的には、どのような方法があるのでしょうか?」

 

不動産の共有解消としては、共有者が買い取る方法、全体を第三者に売却する方法など、いくつかの選択肢があります。しかし、本来は共有者全員が合意したうえで話を進めなければなりません。

 

伊藤さんの姉は、貸店舗の経営に強い関心を持っており、売却する意思がないのは明確とのこと。そのような事情から、伊藤さんには、自分の持分を母親に買い取ってもらってはどうかと提案しました。

 

相続対策の視点で考えると、母親に伊藤さんの持分を買い取ってもらえば、母親の保有する現金が不動産に代わるため、財産の評価が下がって節税になります。

 

その場でざっくりと計算したところ、母親が買い取ることで、将来の相続税の申告も不要になる可能性が高いという結果になりました。なにより、姉と共有する不動産から解放されることで、伊藤さんの不安が軽減します。

 

「母に相談してみます…」

 

そういうと、伊藤さんは事務所をあとにしました。

母に持ち分を買い取ってもらい、さらに母が贈与して節税に

それから3週間ほど経過したところ、再び伊藤さんから連絡がありました。

 

「母に相談したところ、買い取ってくれるそうです」

 

伊藤さんの依頼を受け、早速筆者の事務所でも対応を進めることになりました。

 

亡き伯母から貸店舗を相続したのは3年前ですが、遺贈によって取得した財産であることから、売却にかかる税金も安く抑えられました。

 

さらに伊藤さんの母親は、このタイミングで娘2人に同額の現金を贈与することになりました。これは「相続時精算課税制度」を利用した贈与となります。2500万円までは特例を使うことで贈与税がかからず、受ける側にも負担がありません。

 

控えめで物静かな伊藤さんが思い切って行動を起こしたことで、一気に状況が動き始めました。

 

手続きを進めるなかでお話をうかがったところ、伊藤さんのご家族には「財産=平等に相続」という認識があることが判明しました。伊藤さんの父親が亡くなったときも、法定割合できっちり分割しており、おそらくその流れで、伯母からの財産も、平等に相続するための「共有」という着地になった模様です。

 

上述しましたが、不動産の共有は、将来的なトラブルのタネになりがちであるため、注意が必要です。経営上の方針の違いや、共有者のなかで維持と売却で意見が分かれるなどもよくあります。伊藤さんの場合、姉との関係もいいとはいえず、そういった事情も影を落とすことになりがちです。

 

母親のほうも、伊藤さんの持ち分を買い取って資産に占める不動産の割合を増やし、姉妹に贈与することで、将来の節税を実現しました。伊藤さんも母親も将来の不安を解消できた、いい着地になりました。

 

不動産の共有はできる限り回避し、もしすでに不動産を共有している場合は、所有者が健在の間に、共有者間で売買するなどして解消しておくことが望ましいといえます。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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