(※写真はイメージです/PIXTA)

家計の金融資産およそ2,000兆円のうち、54%が現預金に眠っている日本。一方、米国では現預金比率がわずか13%ほどと、その差は歴然です(日本銀行調査統計局、資金循環の日米欧比較より)。この圧倒的な差が生まれている要因のひとつは、米国で「プルーデントマン・ルール」が浸透しているからだと、鎌倉投信の代表取締役社長である鎌田恭幸氏はいいます。その「プルーデントマン・ルール」とはいったいなんなのか、みていきましょう。

「資産運用会社」に求められる役割

筆者は、社会人になって以来一貫して資産運用の仕事に携わってきましたが、資産運用という事業は、証券会社や銀行など、他の金融事業とは本質的に異なる性質を持っていると考えています。

 

資産運用会社は、お客様との取引量に応じて収益を得る事業構造とは異なり、その事業は、運用商品をつくるいわば製造業であり、お客様からの預かり資産を長い時間をかけて積み上げることによって成立する、本来とても地道で時間を要する事業です。

 

そのため、資産運用会社には、証券会社とも、銀行とも、保険会社ともまったく異なる経営思想や企業風土、いわばDNAが求められる、と考えています。

 

すなわち、

 

①お客様の大切なお金を預かり、それを堅実にふやすことに対して、真剣に、忠実に向き合う受託者責任の精神

②しばしば直面する厳しい市場環境下でも、決して揺らぐことのない投資哲学、運用方針を築き上げ、堅持する力

③長く信頼される運用商品を自らつくり、(直販であれば)運用会社の立場で自ら販売し、説明責任を果たすプロとしての自覚と、その能力を弛まずに磨き続ける姿勢

 

です。

 

資産運用会社の経営者、実務を担う社員は、このことを頭での理解を超えて、全身に沁み込ませた人物でなければ務まるものではないでしょう。

日本と欧米の資産運用会社にある「圧倒的な」差

著者が前職で米国に拠点をおく資産運用会社に在籍していた際、日本と真逆の、欧米の資産運用会社の独立性の高さ、業界構造の違いを体感し、このことが個人の資産形成における国の格差をもたらす原因であることを感じたものです。

 

具体的には、欧米においては、金融業界における資産運用会社の地位が高いこと、大手金融グループに属さない独立系の資産運用会社のシェアが高いこと、資産運用会社が証券会社などの金融仲介業者に販売を依存するのではなく、資産運用会社が販売機能をコントロールしていること、などです。

 

そして、それを実現可能にする精神的土台が「プルーデントマン・ルール」ではないでしょうか。

 

「プルーデントマン・ルール」は資産運用の本質を突いている

日本ではあまりなじみのない「プルーデントマン・ルール」とは、投資家保護の観点から、思慮深い運用者等が備えるべき規範を謳ったもので、資産運用の歴史の長い米国で培われてきた概念です。その両輪をなすのが顧客資産の管理・運用者に課せられる「注意義務」と「忠実義務」です。

 

「注意義務」とは、顧客資産を管理・運用する際に求められる思慮深さ、注意深さをいい、「忠実義務」とは、受益者の利益を優先的に考えて行動すべき、とする管理・運用者に求められる基本精神を示したものです。

 

さらに本ルールのなかでは、思慮深さの三要素を、勤勉な従事者として払うべき「注意」、専門家としての「能力」、リスクを思慮深く管理する「配慮」、としていて、本質を突いていると感じます。

 

資産運用会社にとって底辺となる「心構え」とは、『資産運用を通じて「受益者のために」何ができるかを考え続け、自らが持つ「注意」「能力」「配慮」を常に磨き続けること』でしょう。

 

そして、ここでいう受益者とは、投資信託等の保有者のみをいうのではありません。投資先、取引先、役職員、地域など、社会全体が含まれることも忘れてはならないでしょう。

 

 

鎌田 恭幸

鎌倉投信株式会社

代表取締役社長

 

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