「ゼロゼロ融資返済」で資金繰りに苦しむ企業が続出…知っていれば防げた!借入金の返済に窮しないための「貸借対照表」の読み方

「ゼロゼロ融資返済」で資金繰りに苦しむ企業が続出…知っていれば防げた!借入金の返済に窮しないための「貸借対照表」の読み方
(※画像はイメージです/PIXTA)

コロナ禍で売り上げが減った企業を対象とする無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が今月から本格化しています。しかし、返済のための資金繰りに苦しむ企業が続出しています。決算書類を会計の知識ゼロの人でも簡単に読み解けることで評判の「風船会計メソッド」を考案した松本めぐみ氏は、「貸借対照表」を読むことができていればこのような事態は防げたはずだと指摘します。松本氏が「風船会計メソッド」を用いて解説します。

「ゼロゼロ融資」で借りたお金を「豚の貯金箱」でみると

以上を前提に、ゼロゼロ融資でお金3,000万円を借りた時、豚の貯金箱(貸借対照表)でどのようにみるのか、解説します(【図表4】参照)。

 

【図表4】貸借対照表(豚の貯金箱)の「流動資産」と「負債」

 

まず、豚の貯金箱の左上の「流動資産」に現金が3,000万円入ります。これだけだと、資金が増えたことになるので、しばらくは安心なような気がします。

 

しかし、同時に、それを調達してきた手段として「負債」の部に3,000万円入ります。

 

ここで思い出していただきたいのですが、「負債」は、前述したように、いずれ「返していかなければならない金額」です。「負債」のところに書かれている以上、いずれ「返していかなければならない時」が来ることを心に留めておかなければなりません。

 

ゼロゼロ融資についていえば、「返済が始まった月」からが大変になります。

 

たとえば、その年度の「税引き後当期純利益」が1,000万円、そして「減価償却費」が800万円だった場合で考えてみます。

 

なお、減価償却費については、本記事では詳細な説明はしませんが、「費用に計上されているけれども実際には出ていっていないお金」くらいに考えていただければ大丈夫です。

 

この場合、その年度の営業活動で作れたお金はざっくり1,000万円+800万円=1,800万円ということになります。この1,800万円から、借入金の返済を賄わなければならないのです。

 

たとえば、その年度で、ゼロゼロ融資以外の借入金の返済額が2,000万円、ゼロゼロ融資の返済額が600万円だったとすると、合計で1年返済額が2,600万円になり、1,800万円の営業活動で作ったお金では返済がきません。その分は、現預金に余裕がなければ新たに借入をして返済をしていくしかありません。

 

またそこで新たな借入をすれば「負債」がさらに増えてしまいます。

 

このループができあがってしまうと、せっかく営業活動で作ったお金を返済支払って終わる。ということになってしまいます。

 

返済支払った後でもまだお金が残り、会社にお金が貯まっていくという仕組みができればベストです。

 

貸借対照表の読み方を理解していないと、このことが見えにくくなってしまうのです。

「借入金」であることを忘れないために「貸借対照表」でチェックを

ここまでご覧になって、「そんなこと長々と説明されなくたって、借入金なんだから返さなければならないのは当たり前じゃないか」と思った方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、それで済むなら、ゼロゼロ融資の返済難がここまで社会問題化していなかったはずです。

 

「ゼロゼロ融資」だけでなく、借入をした場合、当初はそれをいずれ返さなければならないことは当然わかっているでしょう。しかし、人間である以上、日常業務に忙殺されるなかで、そのイメージが薄れてしまうことはよくあります。

 

また、多くの中小企業の経営者の方は、「損益計算書」をみて、どれだけ利益が出ているかを気にしますが、お金の回り方はそれとはまったく別の問題なのです。

 

そんなとき、貸借対照表を折に触れて読み、借入金が「資産」の部と「負債」の部でそれぞれどのように扱われているかをチェックするようにすれば、返済のときになって資金繰りで慌てることは起こりにくくなるはずです。

 

 

松本 めぐみ

松本興産株式会社 取締役

情報イノベーション専門職大学 客員教授

 

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