日米の「国富」比較
リセールバリューという話をしました。最近では、海外の不動産を購入して、節税をしようとか、実際に収益物件として、海外の住宅を購入するということが、富裕層ではブームになっています。そして、その売り文句に必ずあるのは、日本の中古住宅との価格差です。
日本の場合は税制上の決まりとして、建物が無価値になるまでの期間が大まかに言うと木造住宅は20年、鉄骨住宅は30年程度、鉄筋コンクリート住宅は50年程度となっています。これはあくまで固定資産税の算出のための計算式なのですが、この計算式が実勢価格にも影響を与えています。つまり、日本の中古住宅の販売価格はとても安くなっています。税制上の価値を販売価格にも反映させてしまっているのです。
これに対してアメリカやヨーロッパでは、中古住宅の市場があります。たとえば、ドイツは人口8,000万人と日本の3分の2程度なのですが、年間の新築の棟数は20万戸前後と日本の4分の1程度です。人口比では日本の4割以下になります。そして不動産情報では、築20年前後の物件は新しい物件という扱いになっていて、築50年、80年、100年の物件も多数あります。それぞれ建物の価値としては認定されています。
アメリカはさすがに独立から間もないので築100年の物件は少ないのですが、築10年の物件と、築30年の物件ではそれほど価値は変わりません。築50年くらいの物件までは普通に売られています。その結果どうなるかというと、30年間で住宅が富として蓄積される国と、30年経つと建物の価値がゼロになってしまう国とでは、国富といわれる国民全体の資産の合計が大きく異なることになってしまいます。
これでは、われわれがいくらお金を稼いでも、建物に消費されてしまって、自分たちの資産にはなりません。ましてや子々孫々に残る資産としての価値は存在しないことになってしまいます。アメリカやヨーロッパではいったん自宅を建てると、それは万が一のときに売却できるうえに、きちんと子の家族、孫の家族を守る代々の住まいになるわけです。 この差は、[図表4]のグラフのようにとても大きな差になって現れます。
飯村 真樹
株式会社ファーストステージ代表取締役
一級建築士