厚生労働省から『国民生活基礎調査』2022年調査の結果が発表されました。それによると日本における貧困線は127万円。このラインを下回る相対的貧困率は15%ほどでした。意外に身近な貧困問題。今回は「働いても働いても貧困状態」の人たちの実態についてみていきます。
平均月27万円だが…「金がないから飯は抜き」貧困・大卒正社員「生活保護以下」の衝撃給与額 (写真はイメージです/PIXTA)

働いても働いても生活保護水準以下…「ワーキングプア」の現実

たとえば、東京都23区の場合について考えてみます。20~40歳ひとり暮らしであれば、生活費の最低水準となる「生活扶助基準額」は7万6,420円、家賃の最低水準となる「住宅扶助基準額」は5万3,700円。つまり「東京でひとり暮らしするには、最低13万円ほどないと生きられませんよ」ということになります。これを月収換算にすると17万円、年収だと200万円以下であれば、「ワーキングプア」だというわけです。その割合、働いている人の約13%。7人に1人程度は「働いているのに貧困」という人たちです。

 

ワーキングプアの代表で語られるのが、フルタイムで働く契約社員や派遣社員といった非正規社員。正社員に比べて低収入の傾向にあるため、たびたび話題にあがります。また難関大学・大学院卒でも企業への就職が実現せず、無職や非正規社員となっている人たちも。さらに大学や研究機関への就職を希望して、非正規の研究員になる、いわゆる「ポスドク」とされる人たちも低賃金で知られています。

 

一方で、大卒・正社員であっても「ワーキングプア」は存在します。厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、大卒・正社員、20代前半の平均給与は月23.5万円、20代後半で27.3万円。東京都23区の生活保護水準の月収17万円を下回るのは、20代前半で0.5~2.2%、20代後半で0.5~1.5%。大学を卒業したばかりであれば、50人に1人はワーキングプア、という可能性があります。

 

若年層の貧困問題は実態が見えづらいという課題があります。たとえば貧困と聞いて思い浮かべるのは路上生活者ですが、そのような生活をおくる若者を見たことがある人は少ないでしょう。それゆえ「若い人で貧困問題に直面している人なんているの?」と多くの人は考えるわけです。しかし、たとえば実家暮らしの若者の場合、本当は貧困の水準でありながら、毎日、手作りのご飯を食べ、暖かい布団で寝ています。なんの問題もないかもしれませんが、ひとたび、実家を離れなければならなくなったときは悲惨です。家賃を払ったら、残り7万円。これで電気代、水道代、ガス代、携帯電話代と、光熱・通信費などを払ったら、残りわずか。「お金がないから飯は抜きだな……」そんな生活に陥るわけです。

 

また若者の生活をひっ迫させているのが、奨学金の返済。平均月返済額は1.7万円ほどだといわれていますが、ひとり暮らしで月収17万円では恐ろしいほどの負担。日本学生支援機構(JASSO)の奨学金について、借りた人の約3割もの人が、延滞を経験したことがあるといわれています。

 

――お金がありません!

 

そんなSOSがなかなか届かないなか、自力でなんとかするしかない……そう考えるなら、まずは手っ取り早いのが転職。いわゆるブラック企業勤務、かつ低賃金で困窮しているなら、その会社で長いこと働くメリットはほぼないでしょう。長く働くだけキャリアの無駄遣いとなるので、若いうちに転職を実現させることが最良の道だといえます。

 

また副業を始めるのもひとつの手。もちろん、現職の就業規則に抵触しなければ、という条件付きであるものの、最近はクラウドソーシングサイトの充実により、仕事終わりに気軽に在宅ワークを始められる環境が整いつつあります。

 

いま、国は異次元の少子化対策として、なんとか子どもを増やそうと躍起になっているところ。若年層の貧困問題を深刻化させてしまうと、経済的な理由から子どもを持てない人が増えることになり、少子化がさらに加速してしまいます。若者の貧困は、日本の未来を左右する大問題なのです。