財政政策と金融政策
報告は財政赤字比率目標緩和(3%、前年比0.2ポイント拡大)、地方政府のインフラ投資財源となる地方債(専項債)発行枠増額(3.8兆元、前年比1500億元増)と積極財政姿勢を表明。専項債は上期2.3兆元と発行枠の60%を発行済。
ただ赤字比率目標は22年赤字実績5.7兆元、4.7%に比べると抑え目、またインフラ投資の主体である地方財政は全体として厳しい。ゼロコロナ政策で財政支出が膨らむ一方、地方歳入の半分近くを占めていた土地譲渡収入(土地使用権を開発業者に売却した収入)が不動産市場低迷で激減、22年から前年比20%以上の減少が続いている。
中国の金融政策は一般に、緩和、適度に緩和、モデレート(穏定)、適度に引締め、引締めの5つに分類されている。10年以降「穏定」が続いており、報告の金融政策はこれを維持。高レバレッジ経済からの脱却、特に不動産部門の高債務体質是正の方針は基本的には変わらず。報告は「金融政策は正確(精准)で効果的(有力)である必要」とした。
中国地元経済誌は、「精准」は「特に特定領域を支援する構造的政策であること」、「有力」は「真に実体経済に影響を及ぼし、目に見える効果が現れること」「現状必要なのは消費や民生分野に資金を回す構造的政策で、人民銀行が金利引き下げといったバラマキ(大水漫灌)政策を採る頻度は減っている」「3月の預金準備率引き下げは長期流動性確保が目的で金融政策方針の根本的変更を意味しない」と論評。実際、貸付金利(LPR)は5月まで9カ月連続で据置かれ、地元紙はこれを「人民銀行は戦況を見て兵を動かさない状態(按兵不動)」と報じている。
ただ預金準備率引き下げは市場の予想外。またLPRも6月に引き下げられた。当局が決して景気先行きを楽観しておらず、むしろ懸念を強めていることがわかる。
金森 俊樹
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