(※写真はイメージです/PIXTA)

駅前の商店街から一本入った閑静な住宅地に、母親(82歳)とふたりで暮らしているAさん(60歳)。5年前に食品卸売業を営む父を亡くし、その遺産で優雅に生活しているように周囲からは見られていました。しかし、その陰で「老後破産の危機」に陥っていたのです……。いったいなにがあったのでしょうか。牧野FP事務所の牧野CFPが、Aさんの破産危機の原因と相続時のポイントについて解説します。

父が興した会社が法人化…事務として成長を支えたAさん

Aさんは、5人家族の長女として生まれました。兄弟はAさんのほかに、2人の弟がいます。父は45年前、Aさんが15歳のときに食品卸売業「YX商会」を創業。母は経理を担当しました。Aさんも短大卒業後に事務として、次男のCさんも大学卒業後営業に加わり、従業員を増やしながら家族みんなで事業を発展させました。

 

ちなみに、長男のBさんは、地方の大学に進学後、大学教員としてその土地に留まりました。結婚して家族を持ち、生涯その地で生活することを両親も姉弟も認めています。

 

そして10年前、父が興したYX商会は「YX株式会社」として念願の法人化を果たします。代表取締役社長は父、専務取締役はCさんです。母とAさんも役員に就任しました。

 

ところが、就任直後から体調を崩した父は、治療に専念するため7年前に社長を退任。同じタイミングで、父の看病のため母もAさんも役員退任を余儀なくされました。それぞれ保有していた自社株は売却し、3人には退職金が支給されました。

 

その後、次男のCさんが代表取締役社長に、Cさんの妻や古参の従業員が新たに役員に就任。YX株式会社は新体制でも順調な成長を遂げ、売上は創業依頼最高額を記録。それを見届けるように、父は5年前に他界しました。

 

父が残した「遺言書」の内容

母子は父がのこした遺言書のとおりに遺産を相続し、「配偶者控除」の適用を受ける母以外は相続税を納付。相続に関わる手続きを無事完了させました。

 

遺言書には、以下のように書き添えてありました。

 

長女Aへ

母の面倒をみて、その後は自宅を相続してほしい。

 

長男Bへ

帰ってきたときのために、借家1棟を残す。

 

次男Cとその家族へ

改めて、会社の発展を託す。

 

出所:筆者が作成
[図表1]父の遺言書に記されていた遺産分配と家系図 出所:筆者が作成

 

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