(※画像はイメージです/PIXTA)

鈴木財務大臣は、2023年6月30日の記者会見で、円相場が一時1ドル=145円台まで下落したことに関し、「行き過ぎた動きに対しては、適切に対応しなければならない」と述べ、「為替介入」の可能性を示唆しました。為替介入とはどのようなものなのか、そのしくみと財源、実施する場合の条件等について、今日の「円安ドル高」が生じている要因にも触れながら解説します。

「円安ドル高」の要因と「為替介入を行うか」の判断基準

昨今の円安ドル高の要因は複数指摘されていますが、最も大きいのは、アメリカと日本の「金利の差」であるといわれています。

 

為替相場は通貨間の需給関係によって決まります。ここまで円安ドル高が進行している原因は、ごく単純化して表現すれば、「円」の魅力が低下し、「米ドル」に魅力があると考えられていることにあります。

 

アメリカにおいては、現在、「利上げ」が進行中です。これに対し、日本は「マイナス金利」がずっと続いています。そのなかで、「円よりも米ドルを持っていた方が有利だ」と判断されているのです。

 

すなわち、2020年から続いた新型コロナウイルス禍の下、アメリカの中央銀行であるFRBは金融緩和を行いました。その結果、景気の回復とともに急激なインフレが発生したため、インフレ退治のため「利上げ」が相次いで行われてきました。2023年6月は久しぶりに利上げが見送られましたが、FRBのパウエル議長は、6月28日の会見で、7月以降の利上げの可能性を示唆しています。

 

これに対し、日本においては、長年にわたり一貫して「マイナス金利政策」が継続されてきました。2022年12月に長期金利の上限が「0.25%」から「0.5%」に引き上げられ、2023年4月に日銀総裁が黒田東彦氏から植田和男氏に交代したことで「政策転換か」という見方も一部にありましたが、結局、日銀は金融緩和を継続する路線を踏襲しています。

 

為替介入は、為替相場の急激な変動を抑える効果があります。しかし、一歩間違えば、相場操縦と同じ効果をもたらす可能性があります。大ざっぱに表現すれば、国が「FX」を行うのと同じになってしまうリスクがあるということです。

 

また、効果がごく一時的なものに留まったのでは、あまり意味がありません。

 

したがって、介入の必要性、タイミング、規模を判断するのに際しては、きわめて高度な政策的判断が要求されるといわれています。

 

前述のように、今回の「円安ドル高」は、もともとは国の政策の違いに起因するところが大きいものです。もし、そこに、投機筋の動きが絡んで加速しているのだとしたら、どこまでが「政策」による不可避なもので、どこからが「投機」によるものなのかを見極めるのは困難であり、高度な判断が要求されます。

 

実際、前回の2022年10月の為替介入の効果の是非については、有識者の間でさえ評価が分かれました。

 

鈴木財務大臣は、6月30日の会見で、「行き過ぎた動きに対しては、適切に対応しなければならない」と述べました。これは為替介入の実施に含みをもたせたものといえますが、もし為替介入に踏み切る場合、現状を的確に分析したうえで、タイミング、規模等を慎重に判断することが求められます。

 

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