(画像はイメージです/PIXTA)

※本記事は、有限会社e.K.コンサルタント代表取締役・森康彰氏の『地方で働き、地方で生きるという選択』(幻冬舎メディアコンサルティング)より抜粋・再編集したものです。

なぜ都会で働き続けるのか?

都会で働き続けることに対して違和感をもったことで、地方での働き方や生き方を実践している人は確実に増えています。地方創生ブームを受けて東京から地方にU・Iターンした人、コロナ禍以降のテレワークの普及に合わせて地方に生活拠点を移した人やコロナ禍の影響で失業や収入の減少を余儀なくされたのをきっかけに地方に移住した人がいます。

 

その理由はさまざまだと思いますが、長らく続いた東京一極集中の流れに変化の兆しがあります。その一方で東京をはじめとした都会で働き続けている人が少なくないのも確かです。それが一概に悪いというわけではありませんが、なかには東京での暮らしにメンタルをすり減らしている人もいます。そのような人が新しい生き方、働き方を選び取ることを難しくしている理由についてはいろいろ考えられますが、そもそも別の選択肢が存在することに気づいていない人が少なくありません。

 

現在の状況に違和感をもってはいるものの、それ以外の生き方や働き方を思い描いたこともなければ、そんなものがあるかどうかさえ考えたこともない、という状態であれば具体的に何をどのように変えていくべきか、その一歩を踏み出せません。このパターンにはまりやすいのが現在の20代、30代の人たちです。

 

この世代の親は高度経済成長を体験してきた世代です。いい換えれば「東京の一流大学を卒業して有名な会社に入り、一生安定した地位で働く」という古い成功モデルが当たり前の時代に生きてきた世代です。親世代と考えを共有する子世代がずっと東京で暮らしていたら、ほかのモデルに触れる機会もありません。

もう一度自分の人生について考えてみる

子どもの頃からさまざまなことを我慢して、頑張って手に入れたものを失いたくないという心理がハードルになっているケースもあり得ます。保有する株式に含み損が生じていてもなかなか“損切り”できないのと同じように、多大な時間と労力をかけて手に入れたものを手放し、ゼロからリスタートするのは勇気のいることです。

 

例えば小学生の頃から受験戦争を勝ち抜いた末に、エントリーシートを何十枚も作成して有名企業に就職し、激烈な出世競争を生き抜いてきたという人もいるはずです。今までの努力で獲得した成果を簡単に手放すわけにはいかないというのも理解できます。ただ今一度立ち止まって、想像してほしいのです。これからも終わりのない戦いを勝ち抜けるという根拠はないのです。また同様に勝ち抜くことができたとしてもその先に豊かな人生が待っているという保証もないのです。

 

そもそも都会でサラリーマンとして働かなければいけない必然性は存在しません。もちろん都会で働くことに不満を感じない人や、働くうえで自分なりの幸せをつかんだ人も多くいると思いますので、都会でサラリーマンとなること自体を否定するつもりはありません。ですが生き方を一生後悔しないともいい切れないのです。

 

もしも都会で働くことに対してあなたが違和感をもっているのであれば、もう一度自分が生きるうえで大切にすべき価値観について考えてみてほしいのです。

家族で豊かに暮らすのは難しい

仮に独身で一生を一人で生きていくことを心に決めていれば東京での暮らしはそれなりになんとかなるはずです。しかしパートナーと結婚し子どもと一緒に豊かな時間を過ごしていきたいと考えるのであれば、都心でのリッチな暮らしは途端にハードルが上がります。まず家族で住めるような大きなマンションや戸建てを都心に買うだけでも高額になります。23区内での平均的な注文住宅の購入金額は7000万円を超えます。

 

さらに子どもができれば教育費を考慮しなければいけません。日本政策金融公庫が2019年度に行った「教育費負担の実態調査結果」によると、高校入学から大学卒業までにかかる教育費用は、国公立大学を卒業した場合で平均約748万円、私立大学文系で平均約965万円、私立大学理系で平均約1070万円です。子どもを私学の小中学校に行かせたり習い事をたくさんさせたいと思えば教育費用は青天井で増えていきます。場合によっては、老後資金を貯蓄することさえ難しくなってしまいます。

 

また、新型コロナウイルスの感染拡大とともにテレワークの普及が進み長時間労働は減少しつつあるといわれています。一方で深夜にまで及ぶ残業が続いているという会社もあります。残業が続けば家族とゆったりとした時間を過ごしたり、自分のための自由な時間をもつ余裕なんてほとんどありません。

 

このように金銭的、時間的観点から考えると、東京でサラリーマンをして豊かになるのは非常にハードルの高いことなのです。でもそんなことで悩んだり、迷ったりする必要はありません。これまでとは違った豊かさや成功を目指せばよいだけの話なのです。高度成長期やバブル時代の豊かさ、成功のイメージや東京発信のミームに縛られて「なぜ、豊かになれないんだろう」「なぜ、成功できないのか」と嘆いているのはもったいないし不毛だと思います。

やりたい仕事を見つけようとするのは、そもそもナンセンス

豊かで成功していると呼べるような人生を実現するためには、どのような仕事を選ぶべきなのかという問題があります。まずは「好きかどうか」という基準で仕事を選ぶ発想そのものを変えていくことが必要です。どのような仕事に就けば自分の人生を豊かにできるのか、好きなことをやらなければ一度きりの人生を台なしにしてしまうのではないかと大きなプレッシャーを感じる人もなかにはいると思います。でも悩む必要なんて何もないのです。

 

好きなことを仕事にしなければならないわけではないし、好きで選んだ道でなくともその後の頑張り次第で一流と呼ばれる存在になることは十分に可能だからです。

好きな仕事より、必要とされる仕事を

私は「必要とされること」を仕事にすることをお勧めします。生まれた子どもを抱いたときに感じるような誰かに必要とされている感覚、それに伴って生じるなんともいい難い喜びを想像してみてください。こうした豊かな感情を得られる仕事を通してお金以上に代え難い価値を享受できるのです。そしてこうした前提で取り組んでこそ、人はやりがいを感じながら仕事に取り組み、充実した日々を過ごすことができます。こうした意味での「必要とされている」感覚が得られる仕事は東京など大都市では少ないかもしれません。

 

東京は膨大な人口を抱えているのに加え、多くの企業が仕事の分業化・効率化を極端に進めています。そのため必要とされることはほぼすべて、すでに誰かが手掛けています。必要とされることがあるとすれば、超巨大な組織の歯車として与えられた役割をきちんと果たすことが求められているに過ぎない場合もあり、特定の個人が必要とされているというわけではない場合があります。もちろんそのような仕事も企業の経営に関わる非常に大切な仕事ですが、働く人自身に必要とされる感覚が生まれることは少ないと思います。

 

「必要とされている」と実感できる仕事は地方都市には数多くあります。都市部には存在する便利なサービスが導入されていないケースもありますし、それ以上に少子高齢化が進んでいることから、本来、なくてはならないサービスも消滅の危機を迎えています。これは、ビジネスチャンスです。自分自身の能力を発揮できる場所、自分自身の人生を輝かせられる場所であるといえます。

 

森 康彰

有限会社e.K.コンサルタント 代表取締役

 

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地方で働き、地方で生きるという選択

地方で働き、地方で生きるという選択

森 康彰

幻冬舎メディアコンサルティング

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