生前整理で「財産」を整理する際の進め方
生前整理のうち、財産の整理はどのように進めていけばよいのでしょうか? 基本的な進め方は、次のとおりです。
自分の財産を洗い出す
財産の整理は、初めに自分の財産を洗い出すことから始めます。財産とは、たとえば次のものなどです。
・不動産(土地・建物)
・預貯金
・証券口座
・会員権
・貴金属
この段階では、金額や価値にかかわらず、細かい財産もすべて洗い出しておくとよいでしょう。
併せて、「財産」ではありませんが、契約しているサブスク(継続課金)サービスやクレジットカードなどについても洗い出しておくことをおすすめします。特に、自動引き落としになっているサブスクサービスは契約自体を忘れていることもあるため、通帳やクレジットカードの明細などを確認して、洗い出すとよいでしょう。
また、借金などのマイナスの財産がある場合はそれも記載しておきましょう。
財産の一覧表を作成する
次に、洗い出した財産やサブスクサービスなどを、一覧表にまとめましょう。財産の一覧表をつくる目的は、主に次の2点です。
1. 処分する財産などを自分が検討するため
2. 自分の死後、家族に自分の財産を伝えるため
一覧表には決まった様式はなく、手書きであってもパソコンなどで作成しても構いません。ただし、パソコンで作成した場合には、いざというときに家族が開けない可能性があるため、印刷をしておくとよいでしょう。
不要なものは処分・解約する
作成した一覧表を確認しながら、財産やサービスの整理を進めます。たとえば、次のことなどが考えられます。
・少額しか入っていない銀行口座の解約
・ほとんど使っていない証券口座の解約
・使っていないサブスクサービスの解約
・使っていないクレジットカードの解約
・使っていない会員権の売却
これらを行い財産やサービスの「数」を減らしておくことで、自分の財産の全容が把握しやすくなります。また、いざというときに家族が行う相続手続きの負担も、大きく軽減することが可能となるでしょう。これと併せて、先送りにしているトラブルがあれば、解決へ向けて動くことも検討するとよいでしょう。
たとえば、すでに亡くなっている故人名義のままの不動産がある場合や、隣地との境界が定まらない土地がある場合などです。これらのトラブルは、いまのうちに解決しておかなければ、次世代まで引き継がれてしまうためです。
そのため、生前整理をきっかけに、弁護士へ相談しておくことをおすすめします。
「生前贈与」を検討する
財産の全容が確認でき、今後の生活に余裕がありそうな場合には、子どもや孫などへの生前贈与も検討するとよいでしょう。生前贈与とは、生きているうちに、自分の財産を渡しておくことです。生前贈与をする相手に、特に制限はありません。そのため、「あげます」「もらいます」という意思の合致さえできるのであれば、誰に対してであってもすることができます。
ただし、高額な財産を贈与した場合には、贈与税にも注意が必要です。贈与税は「もらった側」に年間110万円の非課税枠がありますが、これを超えると納税義務が発生するため、あらかじめ税理士などの専門家へ相談するとよいでしょう。
また、子どもが複数いるにもかかわらず一部の子どもにだけ多額の贈与をした場合には、相続の際にトラブルとなる可能性があります。この点で心配な場合には、弁護士へご相談ください。
遺言書の作成を検討する
生前整理の一環として、遺言書の作成も検討するとよいでしょう。遺言書とは、自分が亡くなった時点で遺っていた財産の行き先などを、生前に決めておくための書類です。
すべての遺産について行き先の決まった有効な遺言書があれば、相続発生後、相続人同士で遺産わけの話し合い(「遺産分割協議」といいます)をする必要はありません。このことから、遺言書を作成しておくことで、相続トラブルが防止できる可能性が高くなります。
ただし、無効な遺言書やあいまいな遺言書があれば、むしろ相続トラブルの原因となってしまいかねません。そのため、遺言書は無理に自分1人で作成せず、弁護士など専門家のサポートを受けて作成した方がよいでしょう。
まとめ
生前整理とは、自分が元気なうちに、物の整理や財産の整理をしておくことです。生前整理をきちんと行っておくことで、いざというときにおける家族の負担軽減につながるでしょう。
また、生前整理の一環として遺言書を作成しておくことで、相続トラブルの予防ともなります。ただし、問題のない遺言書を自分で作ることは、容易ではありません。そのため、遺言書の作成は、弁護士などの専門家に相談して行うことをおすすめします。
堅田 勇気
Authense法律事務所
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