都内で生まれ育った35歳の米田さんは、自治体職員として週4日働き、年収は348万円です。夫の収入と合わせると世帯年収は1,000万円ほどあり、これは日本の上位12.7%にあたります(厚生労働省:国民生活基礎調査の概況)。しかし本人は「私は下のほうで生きている」と嘆きます。『年収443万円』(講談社現代新書)著者でジャーナリストの小林美希氏が、米田さんへの取材からわかった「日本の世帯年収1,000万円」の実態を解説します。
世帯年収1,000万円の35歳・女性「スタバは分不相応」…“税込み705円”に手が出ない「日本の上位12%」のリアル【ジャーナリストが取材】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「私は非正規」「私は下のほうで生きている」…35歳女性の“自覚”

「私は下のほうで生きている」コンビニは行かず、クーラーもつけない生活
──東京都・米田美鈴(35歳)・自治体職員・年収348万円(世帯年収1,000万円)

 

私たちの年金って大丈夫なのかなぁ。ずっと前から、漠然と不安になっているんです。年金が出たとしても、きっと生きていけるだけの金額ではないはず。

 

だから、日々、節約するしかないですよね。コンビニは高いから行かない。そんなの基本中の基本。やっぱり行くなら、安いスーパーの「まいばす」(「まいばすけっと」)ですよ。

 

「スターバックス」には行かなくなりました。「和三盆ほうじ茶フラペチーノ」が大好きで、たまには飲みたいなぁ。けど、トールサイズで税込み705円(※)なんて出せないです。705円かぁ、って思っちゃって。ドリンク1つの金額でランチに行けるじゃないですか。

※取材時の価格。2023年7月時点現在の価格は税込み715円。

 

ずっと私のなかで「私は非正規で週4の仕事だ」「私は下のほうで生きている」という気持ちがあるんです。その私がスタバなんて分不相応なんじゃないかと。

 

ランチで1000円かけるのも贅沢ですねぇ。そもそも外食するのが贅沢ですよ。節約のために220円のサンドイッチやパンを買って食べています。ちょっと量が足りないけど、いつもお菓子をくれる年配の職員がいて、ホント、助かります。その人は定年退職しているから、余裕があるみたいで、羨ましいですよ。

 

夫は職場で370円の弁当を頼んで食べているそうです。家を買ってからは、夫はペットボトルのお茶を買わずに、水筒を持っていくようになりました。弁当を持たせてあげればいいんでしょうけど、疲れて作る気がしないんです。おかずを詰める時間がもったいないし、弁当箱を洗う余裕だってあるわけない。

 

食洗機、欲しいですよ。いやーっ、それも贅沢ですね。子育てと家事と仕事で、分刻みのスケジュールを考えたら、生活必需品として買ってもいいかなって迷います。洗濯機は二槽式だったけど、子育てが大変すぎて全自動を買いました。うーん。食洗機、どうしましょう。

日本はほんとうに「選択肢がある国」?

職場の非正規の同僚と話すのは、「日本って、選択肢あります、自由がありますっていうけど、実際には自分の選択じゃないよね」ということです。

 

例えば、トマトを買おうと思って、安いスーパーの「オーケー」に行くじゃないですか。卵は10個入りが198円だと買います。200円を切らないと買えない。なんか、これって不自由な気がするんです。

 

だからチョコレートだって、本当はフェアトレードの「ピープルツリー」を買いたいけど、税込みで388円もするから、明治やロッテの板チョコを底値で買うんです。子ども服は中古、リサイクル、お下がり。だって、すぐ身長が大きくなって着ることができなくなるんですもん。

 

すごく不自由です。良いものを、ソーシャルグッズを買うのって、すごく贅沢なことなんだなぁ、と思います。本当に欲しいものなんて、選べない。

 

こないだ「50代、小さな暮らしがおすすめの理由」という記事を読みました。心地いいもので暮らしましょうとか、なんだかんだいって小洒落(こじゃれ)たインテリアが登場するんです。分かるけど、行くのはやっぱり「ダイソー」でしょ? 100円ショップに行っちゃうなぁ。これじゃあ不況になるのは、当たり前じゃないですか。