所有物件が不人気の「ワケ」を理解する
中国の古典、孫子の兵法には「彼を知り己を知れば百戦殆あやうからず」との教えがあります。不動産売買における「彼を知る」とは、買い手のニーズや不動産業者のビジネスを理解することです。
買い手の気持ちや、仲介業者の論理がわかっていれば、実際の取引においても危なげなく立ち回ってメリットを得ることができるというものです。
次に「己を知る」とは、自分が売却しようとしている不動産の性質を知ることです。それが不人気な「ワケあり物件」であるとしたら、いったいどのような「ワケ」があるのか、その「ワケ」をカバーするには何をすればよいのかを理解することで、お客様に対して物件を魅力的にアピールすることができるようになります。
そこで、まずは自分の物件に、どのような不人気の「ワケ」があるのかを、いくつか代表的な事例をあげて見ていきましょう。
築年数によっては価格はゼロどころかマイナスに
①築年数が古い物件
不動産の上物は新しければ新しいほど価値が高くなります。欧米はともかくとして、日本ではこれが絶対的な真理です。欧米では、伝統的な石造りの建物などにも人気が集まりますが、日本では伝統的な古民家といえども住みたがる人は多くはないでしょう。
もちろん、欧米に比べて日本の住宅が、耐久性で劣るというわけでもありません。建築技術でいえば、住宅でもマンションでも日本は世界でも最高レベルにあります。違いがあるとすれば文化や慣習の部分です。
ちなみに、日本の法律では、木造住宅・店舗の減価償却用の耐用年数は事業用で22年、自己の居住用で33年となっています。これは、税制上は木造住宅には33年間の使用価値があることを示します。もちろん、実際の耐用年数はもっと長く、実際に存在する木造住宅を見ると、築50年や60年の物件もたくさんあります。
しかし、市場価値でいえば、木造住宅はだいたい15年も経てば価値がゼロになってしまいます。つまり築15年の木造一戸建ての物件があったとすれば、その価格は、ほぼ全て地価であって、住宅部分は価格に入っていないというわけです。
さらにいえば、築50年の住宅などでは、その価格はゼロどころかマイナスになることもあります。新しい買い主が住宅を取り壊す費用がかかるからということで、土地価格から住宅の取り壊し費用が引かれて、物件価格になっているからです。
ちなみに、鉄骨鉄筋コンクリート(RC)造の建物の場合は、減価償却用の耐用年数は事業用で47年、自己の居住用で70年です。RC造は歴史が浅いので、明確にはわかりませんが、実際の耐用年数も同じ程度ではないでしょうか。
ですが、市場価値でいえば、やはりRC造のマンションといえども、せいぜい30年間でゼロになるのではないかと思います。