「駅から近い」ことが、今や住宅の必須条件
③交通の利便性が悪い物件
不動産屋として売り出し中の不動産を見ていて感じるのは、人気のない物件、価格が下がっていく物件の特徴は交通の利便性が悪いことです。
かつて、住宅が不足していた時代には、駅からバスで何分などといった物件でもわりとよく売れていたのですが、現在は、駅から歩けないくらい遠い物件は本当に人気がなくなりました。
バス停が近くにあればまだいい物件で、ひどいところになるとバス停からも10分以上歩かなければなりません。都市部ではどうしても駅周辺が栄えますし、人も集まります。駅から近いことは、今や住宅の必須条件になりました。
戸建てであればともかく、マンションの場合は駅から遠いと格段に資産価値が落ちます。電車の線路は人間の身体でたとえるならば血管のようなものです。人口が減少すると、都市の中心部に人が集まるコンパクト・シティ化が進みますから、ますます郊外には人がいなくなるでしょう。
駐車場に車を入れるたびにストレスを感じる!?
もちろん「駅から遠くても車があるからいい」という人も、なかにはいます。しかし、車派の人の場合は、物件の道路付けにこだわります。まず、車派の人にとって、駐車場のない物件は、それだけでアウトです。せっかく住宅を買うのに、わざわざ家から離れた駐車場を借りることほどバカバカしいことはありません。
さらに駐車場があっても、家の前の道が4メートル未満の場合は、取り回しが困難です。駐車場に車を入れるたびにストレスを感じたくはありません。建築基準法では、建物の敷地は原則として幅員4メートル以上の道路に接している必要があるとされています。もし敷地に面している道路の幅が4メートル未満の場合は、その敷地には建物は建てられません。仮に建てても、違法建築物になってしまいます。これを接道義務といいます。
しかし、新しく開発された都市はともかく、古くからある市街地では4メートル未満の道が普通に存在しています。江戸時代には車などなかったのですから道もそれほど広く造る必要がなかったのです。法律を厳格に適用すると、古くからある道とそこに面した建物のほとんどが違法となってしまいます。
そのため、建築基準法第42条第2項の規定で、古くからある幅員4メートル未満の道を建築基準法上の道路とみなすように規定しています。これを42条2項道路と呼びます。本来は、幅員4メートル未満のものは道路とすら認めないのですが、建築基準法ができる以前からの道であるため、特例として道路と認めているのです。
このように、幅員の狭い道路はいずれも見栄えが悪く、車での通行に不便なために敬遠されています。また、42条2項道路に面した建物は、建て替えの際に道路幅が4メートルになるように敷地を後退させること(セットバック)が義務づけられているため、将来的には敷地面積自体も狭まることになっています。このため、余計に人気がなくなっているのです。