両立支援等助成金とは
両立支援等助成金は、中小企業・個人事業主が、従業員に対し、「出産」「育児」「介護」と仕事を両立できるよう、所定の支援を行った場合に受け取れる助成金です。以下の3つがあります。
【両立支援等助成金の3類型】
・出産:出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
・育児:育児休業等支援コース
・介護:介護離職防止支援コース
このうち、本記事では「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」と「育児休業等支援コース」について解説します。
助成金の対象となる事業主の要件
両立支援助成金の対象となる「中小企業事業主」の要件は以下の通りです。
【中小企業事業主の要件】
・小売業・飲食業:資本額等の額が5,000万円以下、または常時雇用する労働者数が50人以下
・サービス業:資本額等の額が5,000万円以下、または常時雇用する労働者数が100人以下
・卸売業:資本額等の額が1億円以下、または常時雇用する労働者数が100人以下
・その他:資本額等の額が3億円以下、または常時雇用する労働者数が300人以下
「男性」の育児休業取得促進への助成金|出生時両立支援コース
まず、「出生時両立支援コース」です。
これは、男性労働者が、子の出生直後に育児休業を取得できるように環境を整えた場合を対象としており、2類型(「第1種」と「第2種」)があります。
【出生時両立支援コースの2類型】
・第1種:男性労働者の出生時育児休業取得
・第2種:男性労働者の育児休業取得率上昇
要注意なのは、「第1種」を受給し、ついで、「第2種」を受給するという段階を踏むしくみになっていることです。「第2種」のみ単独で受給することはできません。
◆第1種助成金(男性労働者の出生時育児休業取得)
「第1種」を受給するには、男性労働者が育児休業を取得しやすい環境を整え、実際に取得させる必要があります。
主な要件は以下の通りです。
【第1種助成金の受給要件】
・育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数行っていること
・育児休業取得者の業務を代替する労働者の、業務見直しにかかわる規定等を策定し、その規定に基づき業務体制の整備をしていること
・男性労働者が子の出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得すること
また、「代替要員加算」があります。これは、当該の男性労働者の育児休業期間中の代替要員を新たに確保した場合に加算を受けられる制度です。
第1種助成金の金額は以下の通りです。
【第1種助成金の金額】
・育児休業取得:20万円
・代替要員加算:20万円(3人以上は45万円)
◆第2種助成金(男性労働者の育児休業取得率上昇)
「第1種」の助成金を受給したうえで、男性労働者の育児休業の取得率を3年以内に30%以上アップさせるなどの所定の要件をみたせば、「第2種」の助成金を受給することができます。
第2種の受給要件は以下の通りです。
【第2種助成金の受給要件】
・育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数行っていること
・育児休業取得者の業務を代替する労働者の、業務見直しにかかわる規定等を策定し、その規定に基づき業務体制の整備をしていること
・第1種の申請をしてから3事業年度以内に、男性労働者の育児休業取得率が30%以上上昇していること(または、第1種受給年度に育休対象の男性が5人未満かつ育児休業取得率70%以上の場合に、次の3年以内に2年連続70%となること(2023年4月から))
・育児休業を取得した男性労働者が、第1種申請の対象となる労働者の他に2人以上いること
また、助成金の金額は以下の通りです。
【第2種助成金の金額】
・1年以内に達成した場合:60万円
・2年以内に達成した場合:40万円
・3年以内に達成した場合:20万円
育児休業の取得率の30%アップを達成するまでの期間(年数)が短ければ受給額が大きくなります。
ただし、第1種受給年度に育休対象の男性が5人未満かつ育児休業取得率70%以上の場合には、以下の通りです(2023年4月から施行)。
・1年目・2年目の取得率70%以上:40万円
・2年目・3年目の取得率70%以上:20万円
「女性・男性」の育児休業の取得・職場復帰サポートへの助成金|育児休業等支援コース
次に、「育児休業等支援コース」です。
これは、「育休復帰支援プラン」を作成したうえで、それに基づいて、男女問わず労働者のスムーズな育児休業の取得と職場復帰をサポートし、実際に労働者に育児休業を取得させることで、受給できます。
「育休取得時・職場復帰時」「業務代替支援」「職場復帰後支援」と、「新型コロナウイルス感染症対応特例」の4つがあります。
本記事ではこのうち前3者を取り上げます。
◆育休取得時・職場復帰時
育児休業取得時と、職場復帰時のそれぞれのタイミングで助成金を受給できます。
第一に、育児休業取得時の助成金の受給要件は以下の通りです。
【育児休業取得時の助成金の受給要件】
・育児休業の取得、職場復帰についてプランにより支援する措置を実施する旨を、あらかじめ労働者へ周知すること
・育児に直面した労働者との面談を実施し、面談結果を記録した上で育児の状況や今後の働き方についての希望等を確認のうえ、プランを作成すること
・プランに基づき、対象労働者の育児休業の開始日の前日までに、プランに基づいて業務の引き継ぎを実施し、対象労働者に、連続3か月以上の育児休業を取得させること(産前・産後休業から引き続き育児休業を取得する場合も同様の扱い)
第二に、職場復帰時の助成金の受給要件は以下の通りです。
【職場復帰時の助成金の受給要件】
・対象労働者の育児休業中にプランに基づく措置を実施し、職務や業務の情報・資料の提供を実施すること
・育休取得時にかかる同一の対象労働者に対し、育児休業終了前にその上司または人事労務担当者が面談を実施し、面談結果を記録すること
・対象労働者を、面談結果を踏まえ原則として原職等に復帰させ、原職等復帰後も申請日までの間、雇用保険被保険者として6か月以上継続雇用していること
助成金の金額は以下の通りです。
【育休取得時・職場復帰時助成金の額】
・休業取得時:30万円
・職場復帰時:30万円
また、無期雇用者・有期雇用者のそれぞれについて受け取ることができます。
◆業務代替支援
育児休業を取得した労働者の業務を代わりに行う労働者を確保し、かつ、育児休業取得者を職場復帰させた場合に受け取れます。
主な要件は以下の通りです。
【業務代替支援の助成金の受給要件】
・育児休業取得者を、育児休業終了後、原職等に復帰させる旨を就業規則等に規定すること
・対象労働者が3か月以上の育児休業を取得し、事業主が休業期間中の代替要員を新規に雇用すること(A)、または、業務を見直し既存の社員により対象労働者の業務をカバーさせること(B)
・対象労働者を就業規則等の規定に基づき原職等に復帰させ、原職等復帰後も申請日までの間、雇用保険被保険者として6か月以上継続雇用していること
助成金の金額は以下の通りです。
【業務代替支援の助成金額】
・新規雇用(A):50万円
・手当支給等(B):10万円
また、育児休業取得者が非正規雇用の労働者(パート、アルバイト、派遣労働者)の場合は「有期雇用労働者加算」として10万円が加算されます。
1事業主当たりA・B合わせて1年度あたり10人まで、5年間受け取ることができます。
◆職場復帰後支援
労働者が育児休業から復帰した後、無理なく仕事と育児を両立できるために、法の基準を上回る制度の導入等の支援に取り組み、かつ、その制度を利用する労働者が生じた場合に受給できる助成金です。
受給要件は以下の通りです。
【職場復帰後支援の助成金の受給要件】
・育児・介護休業法を上回る「A:子の看護休暇制度(有給、時間単位)」または「B:保育サービス費用補助制度」を導入していること。
・対象労働者が1か月以上の育児休業(産後休業を含む。)から復帰した後6か月以内において、導入した上記「A」「B」の制度の「一定の利用実績」があること
「A」「B」の制度の「一定の利用実績」は以下の通りです。
・A(子の看護休暇制度):10時間以上(有給)の取得
・B(保育サービス費用補助制度):3万円以上の補助
助成金の金額は以下の通りです。
【職場復帰後支援の助成金額】
・制度導入時:30万円
・A(子の看護休暇制度)の利用時:1,000円×時間
・B(保育サービス費用補助制度)の利用時:実費の3分の2
育児休業等の取得状況の公表でさらに加算(2023年4月施行)
2023年4月から、「出生時両立支援コース」と「育児休業等支援コース」(新型コロナウイルス感染症対応特例を除く)のいずれも、以下の情報を厚生労働省の運営サイト「両立支援のひろば」で公表した場合には、受給額が2万円加算されることになりました。
【公表により第1種助成金が2万円加算される情報】
(1)男性の育児休業等取得率
(2)女性の育児休業取得率
(3)男女別の平均育児休業取得日数
まとめ
少子化対策においては、従業員が仕事と子育てを安心して無理なく両立できる環境が整備されていることが必要不可欠です。
そのためには、雇用主である事業者の協力・サポートの取り組みが欠かせません。また、その取り組みは、従業員に安心感を与え、優秀な人材を確保することにつながります。
「両立支援等助成金」は、それを側面から支援するものであり、積極的に活用することをおすすめします。
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