日本経済の先行きが厳しく、年金の支給額の減少、支給開始年齢の引き上げ等も想定されるなか、「投資」により資産を着実に増やすことが重要になっています。そのためには投資に関する正しい知識が必要です。しかし、昨今では「投資は長期でみれば必ず成功する」等の従来の「常識」が通用しなくなっています。そこで、「投資の学校プレミアム」創業者の髙橋慶行氏が、投資初心者が押さえるべき基本的な考え方について解説します。

放置していても株が上がる「3条件」とその終焉

◆どんな国でも個別銘柄を探す前に「3条件」に注目

株は上がる時もあれば下がる時もありますが、次の3条件が「その市場」で揃っている時には、ある意味で株を買って放置していても株式市場全体が上昇基調になり、勝手に利益は伸びていきます。

 

しかし、この3条件が崩れてしまった場合には、放置したままだと大損してしまう可能性があるので、早めに売って手仕舞いを考えるなどの注意が必要になります。

 

【放置していても株が上がる3条件】

(1)金融緩和─中央銀行の量的緩和政策により、市場に資金が溢れている

 

(2)超低金利─中央銀行の超低金利政策により、金利がとても低い

 

(3)経済成長─政治がうまく機能し、経済成長(人口成長)が持続している

 

この3条件が揃っていて、まさに放置していても株価が上がっていたのが2008年9月のリーマン・ショック以降から2021年末までの米国市場です。

 

この期間に米国株を買って放置していた人たちの中には、その後びっくりするほど利益が上がった人が多いと思います。

 

日本も、1989年末のバブル経済のピークまでは、経済成長(人口成長)の条件と、円高対策のための低金利政策で銀行やノンバンクによる過剰融資などカネ余り状態が整って株が上がりやすく、また2013年頃からはアベノミクスによる金融緩和が行われるなど、3条件までは整っていませんが、株価の上下とこの3条件は密接に関わります。

 

この3条件について知らない人の中には、2020年から2021年あたりにコロナ禍やSNSなどの影響で米国株を始めた人がたくさんいますが、2022年の年初からびっくりするほどの急落に巻き込まれて、含み損を抱えたまま投資をやめてしまった人も同じようにたくさんいると思います。

 

◆世界的なインフレ傾向で各国が利上げに転換

この3条件が崩れる合図は何だったのかというと、米国の中央銀行に当たるFRBが、インフレ懸念として「利上げをする」と決定したことです。

 

米国でもコロナ禍への経済対策として事実上ゼロ金利政策を取っていましたが、2021年11月には量的金融緩和の縮小が開始され、2022年には大幅な利上げをすることがほぼ決定していました。

 

この3条件を理解している投資家であれば、2022年に株式市場が急落して割安になるタイミングを見極めてから、中長期保有する株を仕込むなど、より堅実な選択ができたと思います。

 

ちなみに日本は、長らく経済が成長していないので、この先も3条件が揃うことは長期的に見てもなさそうです。3条件のうちの2条件である金融緩和と超低金利政策が日本銀行によって行われ、株価が保たれているのが実情です。

 

世界の政治経済の中心は米国ですから、米国においてこの3条件がどういう状況にあるかが、日本人にとっても大切です。日経平均株価も米国経済の影響を大きく受けるからです。

 

ですから、投資を始めようとする際は、その時点でこの3条件がどのようになっているかを、ぜひ確認するようにしてください。

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