日本経済の先行きが厳しく、年金の支給額の減少、支給開始年齢の引き上げ等も想定されるなか、「投資」により資産を着実に増やすことが重要になっています。そのためには投資に関する正しい知識が必要です。そこで、「投資の学校プレミアム」創業者の髙橋慶行氏が著書「月10万円を稼ぐ トレード1年目の教科書」(自由国民社)より、投資初心者が押さえるべき基本的な考え方について解説します。

中央銀行の金融政策と相場サイクル

筆者が推奨する株式トレードの投資スタイルは、企業分析や相場分析をすることよりも、チャートから判断できる株価の動きに素直に「ついていく」ことが最重要ポイントです。

 

しかし教養として、金融政策や相場のサイクルなどの最低限の知識を覚えておいた方が、資産形成は成功しやすいでしょう。

 

◆「中央銀行の金融政策」と「4つの相場サイクル」

まず、カギとなるのが「中央銀行の金融政策」です。

 

中央銀行の重要な仕事の1つに、金融政策を通じて物価を安定させ、景気を健全に整えるということがあります。この景気や金融政策と株価との間には密接な関係がありますので、必ず理解しておきましょう。

 

中央銀行の金融政策と株価や景気の流れには一定のサイクルがあり、それが「相場サイクル」と呼ばれます。相場には大きく分けて4局面があり、それは「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」と呼ばれます。

 

◆金融相場

まず、金融相場というのは、不景気になると中央銀行は景気刺激策として金融緩和(利下げ・量的金融緩和など)を行います。

 

それにより市場にお金がたくさん出回る形になり、その結果企業も資金調達がしやすくなります。企業の業績も低迷から反転間際になると、株式市場にもお金が流れ、株価も上昇しやすくなります。この時の相場を「金融相場」といいます。

 

まさに、中央銀行の金融政策で株価が上がる相場ともいえ、「不景気の株高」という状況になります。

 

2020年2月のコロナショックの直後から、米国を始めとする世界の主要な中央銀行がゼロ金利を含む超金融緩和策を取ったため、経済はコロナ禍で大きく停滞しつつも株価は暴落してから短期間でV字回復し、圧倒的に上昇したのは記憶に新しいところです。

 

[図表1]は当時のS&P500指数の動きですが、このすさまじい一本調子の上昇により、日本でも米国株ブームが到来しました。

 

[図表1]利下げ後、S&P500は短期間でV字回復しその後は大幅上昇

 

◆業績相場

市場に大量に資金が投下されて景気も上向きになると、企業業績も向上し、当然株価も上がります。この時の相場を「業績相場」といいます。消費も拡大してきて、景気も株価も本格的に上昇し始めます。

 

しかし、これが続いて景気が過熱しすぎると、物価上昇を伴うインフレが起きるおそれが生じてきます。

 

◆逆金融相場

景気が過熱し高インフレが生じてくると、2022年に日本を除いた世界の主要な中央銀行が「利上げ」に転じたように、今度は「金融引き締め策」が中央銀行によって発動されます。

 

金利が上昇するということは、企業も個人も銀行から資金を調達しにくくなります。

 

すると、企業の新規事業の機会も減って売上や利益が伸び悩み、株価も下がると同時に従業員の給与や賞与にも影響が及び、ローンの金利も高くなるので、景気が頭打ちとなって消費も抑制されることになります。

 

そして、企業業績はまだ向上を継続していても中央銀行の金融政策で株価が下がる「逆金融相場」が到来することになります[図表2]。

 

[図表2]中央銀行と相場サイクル

 

◆逆業績相場

すると、次第に企業業績も悪化し景気も後退して投資家心理も冷え込み、株価が下降してきますが、これを「逆業績相場」といいます。景気がさらに悪化すれば、中央銀行は利下げに転じ、景気刺激策を取ります。

 

このように、中央銀行の金融政策は景気だけでなく、株価にとってもダイレクトに影響するので、投資家にとっては大変重要だということを覚えておいてください。

 

 

髙橋 慶行

 

株式会社ファイナンシャルインテリジェンス 代表取締役

 

本メディア並びに本メディアの記事は、投資を促すことや、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、株式会社幻冬舎ゴールドオンライン、幻冬舎グループは、本メディアの情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

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