【成功するM&A】事業価値を見極める「外部経営環境の調査」と「内部経営資源の調査」の具体的な手法…公認会計士が解説

【成功するM&A】事業価値を見極める「外部経営環境の調査」と「内部経営資源の調査」の具体的な手法…公認会計士が解説
(画像はイメージです/PIXTA)

今回は、M&Aにおけるビジネス・デュー・ディリジェンスの具体的な進め方について取り上げます。そのうちの外部経営環境の調査と内部経営資源の調査を中心にみていきましょう。公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

「外部経営環境の調査」と「内部経営資源の調査」の違いとは?

生徒:先生、ビジネス・デュー・ディリジェンスでは、主に「外部の事業環境」「内部の経営資源」「情報システムの統合やデータ移行の確認」「ガバナンスの視点」の4つの視点から調査がおこなわれているそうですが(記事『「会社を売りたいです」「じゃあ、買おうかな!」→会社の価値を見定める、M&A〈ビジネス・デュー・ディリジェンス〉のやり方』参照)、そのなかの外部経営環境の調査と内部経営資源の調査は、どのように違うのでしょうか?

 

先生:どちらも事業価値を評価することが目的ですが、調査方法や重点を置くポイントが違います。外部経営環境の調査では、市場環境や競争優位性を見ることが大事ですが、内部経営資源の調査では、従業員の能力など、組織内部の要素に注目するのです。

 

生徒:内部経営資源の調査は、初期的な検討段階における実施が難しそうですね。

 

先生:そうです。実際は、十分に実施されているケースのほうが少ないでしょう。しかし、製造業などでは、技術力が対象事業の強みを生み出すことが多く、内部経営資源の調査はとても重要な役割を担います。技術力は、事業計画のコスト面を見極めるためにも必要な情報ですからね。

 

[図表]外部経営環境の調査と内部経営資源の調査の相違点

 

生徒:なるほど。内部経営資源の調査は、具体的にどのように進めるのでしょうか?

 

先生:たとえば、製造業であれば、従業員の技術力や生産設備の効率性を調査します。サービス業であれば、社員の接客スキルや管理能力が強みになることから、それらを調査すべきでしょう。どの業界であっても、内部経営資源が競争力に直結することが多いので、しっかりと調査しておく必要があるでしょう。

 

生徒:内部経営資源を詳しく調査することで、事業価値を正確に評価できるわけですね。


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いずれの調査も、慎重な見極めが不可欠に

生徒:外部経営環境の調査のやり方について教えてください。

 

先生:これには3つのステップがあります。1つ目は、市場環境のチェックで、市場が成長するのか、成長の原因は何かを調べます。新しい市場の場合、成長の余地も重要でしょう。

 

生徒:新しい市場だと予測が難しそうですね…。

 

先生:次に、業界の構造を分析します。売り手と買い手の力のバランスや新しい競争相手の出現などを予測するのです。「いままで」と「これから」を分けて考えることが大切でしょう。

 

生徒:なるほど!

 

先生:最後に、対象事業の競争優位性を調べます。専門用語ではKBF、重要な購買要因と言いますが、顧客が何を重視して商品やサービスを買っているかを明らかにし、競合他社との比較をおこなうのです。もちろん、「いままで」と「これから」を分けて分析して、重要な購買要因を見誤らないよう注意しなければいけないでしょう。

 

生徒:「重要な購買要因」とは、どういったものでしょうか?

 

先生:顧客にとって「絶対に満たすべき要素」と「選択肢のなかで決定に影響する要素」を区別することが重要なのです。たとえば、「豊富な実績」が重要な購買要因だと考えられる場合もありますが、その「豊富な実績」が最低限必要な要素なのか、それとも顧客が競合企業ではなく対象会社を選ぶ理由となるのか、慎重に見極める必要があるでしょう。

 

生徒:では、内部経営資源の調査はどのように進めるのでしょうか。

 

先生:内部経営資源の調査は、内部の運営面を詳しく調べることを言いますが、3つの目的があります。まず1つは、QCD、すなわち品質、コスト、納期を調べることです。競合企業と比較して、改善できるポイントを見つけます。2つ目は、問題点を見つけることです。製品の不良率や返品率、リスク要因などを調べます。また、人事・組織が事業の成長を妨げることがないかも確認します。3つ目は、事業計画が現実的かどうかを調べることです。内部経営資源の調査では、コスト面に焦点を当て、過去のデータをもとに今後のコスト維持や悪化の可能性を調べます。また、生産性向上や潜在的な問題も考慮に入れます。

 

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対象事業により、調査上のポイントが変わる点に注意

生徒:先生、外部事業環境の調査と内部経営資源の調査はどちらもビジネス・デュー・ディリジェンスに不可欠だと聞きましたが、何か注意点などはありますか?

 

先生:重要なのは、対象事業の現状に合ったポイントに注目することでしょう。事業の種類や成長状況、競合他社の状況によって、調査すべきポイントは変わってきますからね。

 

生徒:たとえば、どんなポイントが変わるのでしょうか?

 

先生:たとえば、売上高が少数の大口得意先に依存している場合、その得意先との関係を継続できるかどうかを調べることが重要です。しかし、大口得意先に依存していない場合は、市場全体を見ることが必要となるでしょう。

 

生徒:調査のポイントが事業の状況によって変わるんですね。ありがとうございました。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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