(※写真はイメージです/PIXTA)

多くの人にとって、老後生活の糧となる公的年金。現状の給与額や支払い状況から、将来の年金受給額の計算は可能だが、それは「このままの状況が続く」という前提があってのもの。実際には「想定通り」の着地となる人ばかりではないようだ。実情を見ていく。

平均的なサラリーマンは「年金月16万円」程度だが…

毎年、誕生月あたりに送られてくる「ねんきん定期便」だが、50歳以上は「老齢年金の種類と見込額」が記されるようになる。これを見ながら、老後計画を具体的に思い描く人も多いことだろう。

 

なお、通常はハガキによる送付だが、35歳・45歳、59歳には封書、35歳・45歳ではこれまでの加入履歴や全期間の月別状況、59歳には全期間の月別状況が記されてくる。

 

50歳以上で知ることができる年金の見込額だが、これは「現在加入している年金」に、同条件で60歳まで継続加入したことを想定して計算されいる。仮に、20歳から働きはじめて以降、平均的な給与をもらい続けたサラリーマンなら、60歳まで働いた時の平均標準報酬額は47万円となり、50歳で送付される「ねんきん定期便」には、厚生年金部分の見込み額として「10.3万円」程度の金額が記されることになる。それプラス、国民年金が満額受給できれば、月16万~17万円程度の年金が支給されることになる。

 

◆年齢別「サラリーマンの平均給与」

 

20~24歳:22.1万円 / 340.2万円

25~29歳:25.9万円 / 427.4万円

30~34歳:29.7万円 / 495.9万円

35~39歳:33.6万円 / 560.1万円

40~44歳:36.4万円 / 600.8万円

45~49歳:38.8万円 / 636.1万円

50~54歳:41.1万円 / 672.3万円

55~59歳:41.7万円 / 674.0万円


出所:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』

※数値左より、月収(所定内給与額) / 年収

 

だが現実は、なかなか予想通りとはならない。65歳になって年金を受け取る段となり、「見込み額より少ない!」とショックを受ける人も少なくなのだ。なぜそのようなことが起こるのか。

年金が「見込み額を下回ってしまう」主な理由

まず、国民年金保険料の「免除制度」「納付猶予制度」「学生納付特例制度」を利用があげられる。国民年金保険料は月額16,520円(2023年4月~2024年3月)だが、失業等で収入が途絶えて保険料の納付が厳しくなった場合には、「保険料免除制度」を申請できる。承認されると、保険料の一部~全部が免除になる。


免除期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれるが、年金額は免除割合に応じて以下のようになる。

 

・全額免除 → 保険料を全額納付した場合の年金額の1/2

・3/4免除 → 保険料を全額納付した場合の年金額の5/8

・半額免除 → 保険料を全額納付した場合の年金額の6/8

・1/4免除 → 保険料を全額納付した場合の年金額の7/8

 

また20~50歳未満の本人・配偶者の前年所得が一定額以下となり、保険料の支払いが難しくなった場合、「保険料納付猶予制度」の申請ができ、承認されれば保険料の支払いは猶予される。だが、猶予を受けた期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれるものの、受給額には反映されず、減額になる。


さらに学生は、月々1.6万円程度の保険料の納付は厳しい。その場合「学生納付特例制度」を利用すれば納付を猶予され、また、10年以内は追納が可能だが、10年をすぎると追納できなくなり、年金も減額となる。

 

そして、国民年金保険料の「未納期間」の問題もある。国民年金の保険料に未納期間があると、その分、老齢年金は減額される。なお、国民年金への加入は国民の義務であり、未納を放置していると、催告や督促が行われ、最悪は財産の差し押さえをされることもある。

 

また、年金を「繰上げ受給」も影響する。老齢年金は原則65歳から受給開始だが、希望すれば60歳~65歳になるまでの間に受給することも可能だ。しかし、受取額は減額される。減額率は「繰上げ請求した月から65歳の誕生日の前月までの月数×0.4%」で、最大24%の減額となり、この減額率は生涯にわたって変化しない。


「在職老齢年金」を受け取っている人も影響大だ。在職老齢年金とは、厚生年金に加入しながら受け取る老齢厚生年金のこと。基本月数(加給年金を除いた老齢厚生年金の月額)と総報酬月額相当額(その月の標準報酬月額+直近1年間の標準賞与額の合計÷12)の合計が47万円を超えた場合、「(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)×1/2」で求めた支給停止額が在職老齢年金から差し引かれる。

 

 

とはいえ、上記は年金制度に起因するものであり、本人が留意すれば回避は可能だといえる。だが、社会情勢によって減額となる場合は、個人の努力ではどうしようもない。

 

年金額は毎年改定されており、物価や賃金の伸び率から「マクロ経済スライド」の調整率を差し引いたものが最終的な改定率となる。2023年度の改定では67歳以下が+2.8%、68歳以上が+2.5%となったが、調整率の-0.6%が差し引かれた改定率になっている。つまり、調整率の分だけ年金額の価値は目減りしていることになる。

 

現行の年金制度を維持するためには仕方ないが、少子高齢化の進展の影響により、将来の年金の目減りはほぼ確定だ。20年後は現在から2割減少した水準になると予想されている。

 

そうなれば、現在、厚生年金受給者の平均年金額が月14万5,665円のところ、20年後には月11万6,000円程度しか手にできないことになる。さらにそこから税金や保険料が引かれるとなれば、おそらく手取り10万円を切ってしまうだろう。

 

これらのことから、現状の予想では「セーフ」の人も、厳しい状況に追い込まれる可能性は高い。できるだけ速やかに、資産形成を開始することが望ましいといえる。

 

 

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