(※写真はイメージです/PIXTA)

50代男性は、70代になった母親の相続を見越し、最も効果的な相続対策を考えていました。男性は妻に、節税実現のために生活スタイルの大転換を求めましたが、妻から一蹴されてしまいます。どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。

「70代の母の今後が、いろいろ心配になってきて…」

今回の相談者は、50代会社員の山田さんです。70代の母親の今後を心配し、筆者のもとへ相談に訪れました。

 

「母は5年前に父を亡くしてから、ひとり暮らしをしてきました。いまのところ元気ですが、いろいろ心配事が出てきまして…」

 

山田さんは2人きょうだいの長男で、3歳年下の妹がいます。いずれも20代で結婚して家を出ており、それぞれ自宅を保有しています。

 

未来の母親の相続のときに困らないよう、いまからできる対策をしておきたいということでした。

妻に反対され、「資産防衛」の方針が定まらず

母親の財産の内訳は、横浜市の40坪の自宅と自宅近くにある賃貸アパート、金融資産で、およそ1億5000万円です。いずれも配偶者である、山田さんの父親から相続したものです。

 

「母親の家を建て替えて同居すればお互いに安心ですし、節税にもなっていいのではと考えてたのですが…」

 

妹からは「お兄ちゃんに任せる」との言葉ももらい、意気揚々と妻に話をしたところ「ごめんだわ!」と一蹴されたといいます。

 

山田さんの妻は、いずれは資産を整理してホームに入ってもらった方がよいという考えをもっており、方向性が決まりそうにないというのです。

「小規模宅地等の特例」に固執する必要はあるか?

山田さんは、父親の相続のときに母親が資産のすべてを相続し、自宅も小規模宅地当の特例が使えて効果的だったことから、同居が節税になると知っていました。

 

そのため、元気なうちは別世帯でも、節税のためにいずれは同居しておかなければという思いがあり、準備に着手すべきときと考えたようです。

 

また、小規模宅地等の特例を使えば節税になるものの、どこのタイミングで使うことが最も効果的なのか知りたいとのご希望がおありでした。

 

筆者と提携先の税理士は、山田さんの説明を聞いたうえで、いくつかの提案を行いました。

 

居住用の特例は、同居する相続人がいれば、330㎡まで80%減額でき、確実な節税となりますが、それには「同居」「家を持たない」などいくつか要件があります。

 

そもそも、相続はいつ発生するかわかりません。それぞれ自分たちのペースで生活してきた成人が同居するとなると、ストレスになるのは当然です。

 

いくら相続税の節税になるといっても、節税ありきで人生設計を描くのはお勧めできません。何年もの間、未来の節税を目標に日常生活でストレスを抱えるなど、本末転倒ではないでしょうか。

 

これまでの生活を大切にし、快適な毎日を過ごすには、同居ではなく、金融資産で不動産対策をして、貸付用の特例を適用する方法も選択肢です。また、母親にはケアつきの高齢者住宅に住み替えてもらい、自宅を賃貸住宅に建替える方法も検討できます。

 

いくつか方法があることを説明すると、山田さんは安堵され、

 

「妻と母と相談してみます」

 

といってお帰りになりました。

 

相続対策は非常に重要ですが、そもそもの目的は、豊かで幸せな人生を送るために行うものです。家族の希望があるなら別ですが、特例の活用だけを目的に、これから先、何年続くかわからない同居生活をいやいや送っても、だれも幸せになりません。

 

資産防衛を行うには、近視眼的にならず、家族全員の幸せを考えたうえで、適切な方法を選択していくことが重要なのです。

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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