(※画像はイメージです/PIXTA)

4月は多くの会社にとって「年度初め」の月です。もしも、今期も前期と同じくらいの利益が出る可能性があるならば、次なる3月決算対策のために、早いうちから準備をしておくことが有効です。今のうちにしておくべきことの最たるものが「社長・役員の給与・ボーナス」です。条件をみたせば会社の経費にでき、社会保険料の軽減にもつながるといわれています。そこで、本記事では概要を説明します。

◆「支給額」「支給日」はピッタリ守らなければならない

社長・役員のボーナスを「事前確定届出給与」として支給する場合、あらかじめ届け出た支給額を、支給日にきちんと支給しなければなりません。

 

支給額が1円ずれても、支給日が1日ずれても、経費算入はNGとなってしまいます。

 

◆ボーナスの支給を取りやめることはできるが…

では、支給時期になってみて業績が予想より悪く、赤字決算や資金繰りの悪化を避けるためボーナスの支給を取りやめたい場合は、どうすればよいのでしょうか。

 

この場合は、以下の2つの手続きを行わなければなりません。

 

【事前確定届出給与の支給を取りやめるための手続き】

・社長・役員がボーナス(事前確定届出給与)を辞退する旨の書面を提出する

・株主総会等でボーナスを全額不支給とする旨の決議を行う

 

なぜなら、社長・役員のボーナスは、会社と個人との「委任契約」の一部をなしているからです。この契約の効力が維持されたまま「支給日」を迎えると、会社にはボーナスを支払う「債務」が発生します。

 

債務が既に発生している状態で、社長・役員の承諾を得て支給をとりやめた場合、「債務免除益」が発生します。

 

この債務免除益は会社の利益になってしまいます。

 

そればかりではありません。会社はボーナス相当額について所得税等の源泉徴収義務を負います。また、社長・役員の側でもお金が入ってこないのに所得税・住民税が課税されてしまうリスクがあるのです。

 

そのような事態を避けるには、支給日より前のタイミングで、会社のボーナス支払いの債務を発生させないようにする必要があるのです。

 

◆社会保険料の節約にもなる?

なお、この「事前確定届出給与」の制度を利用して、社会保険料を節約するというスキームがあります。最後に、これについても、参考までに、簡単に説明しておきます。

 

社会保険料の額に「上限」があることに着目して、毎月の給与(定期同額給与)を小さくし、ボーナス(事前確定届出給与)を社会保険料の上限よりも大きくすることにより、社会保険料を抑えるという方法です。

 

ただし、この方法を用いると、後々、退職する際に受け取る退職金の額を大きく設定できなくなる可能性があります。

 

というのは、退職金には損金算入限度額があり、それは基本的に報酬月額によって定まるからです。

 

役員報酬の損金算入限度額の算定にもっともよく用いられる「功績倍率法」の計算式は以下の通りです。

 

【功績倍率法の計算式】

報酬月額×在任年数×功績倍率

 

報酬月額を小さく抑えてしまうと、退職金の損金算入限度額も低く抑えられてしまうことになります。

 

なお、それ以外にも、個人の月々の家計のやりくりが困難になる可能性にも注意しなければなりません。

 

したがって、事前確定届出給与の制度を、決算対策だけでなく、社会保険料の節約のためにも利用するのであれば、後々のことも考えて、金額の設定は慎重に行う必要があるといえます。

 

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