「日本人は帰れ」といじめられた幼少期…中国残留孤児出身の女性が大人になり、日本で「カリスマ清掃員」となったワケ

「日本人は帰れ」といじめられた幼少期…中国残留孤児出身の女性が大人になり、日本で「カリスマ清掃員」となったワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

自分は劣っている。自分を肯定できない…。そんな人には言えない苦悩やコンプレックスを子どもに与えているもの、それが「学力」である。未来を生きる子どもたちには、「学力」とは別次元の大切な「物差し」があることを伝えなければならない。今を生きる子どもたちとの「向き合い方」について、都立高校での校長歴・計14年、不登校の高校を改革し、退学者を半減させた経験を持つ、磯村元信氏の著書『さらば学力神話:ぼうず校長のシン教育改革』(新評論)から一部抜粋して紹介。今回は、ある修了式で磯村氏が語ったスピーチの内容をお届けする。

心を込める(修了式・二〇一五年三月)

さて、この一年間で自分が心を込めてやったことはありますか? それは何ですか? すぐに思いつく人はよく頑張った人だと思います。

 

今日は「心を込める」というお話です。

 

あるテレビ番組で、カリスマ清掃員が取り上げられていました。その女性は、羽田空港が「世界一清潔な空港」に選ばれた立役者だと言われています。

 

生まれは中国で、中国残留孤児の子どもとして生まれ、子どものころは「日本人は帰れ」と言われていじめを受け、帰国子女として日本に帰ってきたら、今度は「中国人は帰れ」と言われていじめられたそうです。

 

自分の存在を認めてもらいたくて、清掃の仕事に打ちこみます。でも、いくら頑張っても認めてもらえませんでした。いつも「もっと心を込めてやりなさい」と言われたそうです。

 

全国ビルクリーニング技能選手権で二位になったとき、上司から「心に余裕がなければいい掃除はできません」と言われ、「はっ」と気づいたそうです。それまでは、一生懸命にやってきれいになったらそれでいいと思っていた。でも、それは自己満足で、使ってくれる人がきれいだと思ってくれる、快適な気持ちになってもらえる、それが大切だと気づいたそうです。

 

それからは、人目には付かない場所や匂いまで配慮し、一つ一つの作業を、ていねいに心を込めてするようになったそうです。すると、だんだんと利用する人たちから、「ご苦労さま」、「きれいですね」と声をかけられるようになり、ますます清掃技術に磨きをかけたそうです。

 

そして、技能選手権で見事に一位に輝きました。今では、彼女は清掃員という仕事に誇りと生きがいをもつようになったそうです。

 

「心を込める」ということについて、ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサさんがこんな言葉を残しています。

 

「大切なことは、(自分が)どれだけたくさんのことや偉大なことをしたかではなく、(人のために)どれだけ心を込めたかです」

 

深い言葉だと思います。どんなささいなこと、小さなことにも心を込めてやる。そうすると、周りの人が認めてくれるようになります。

 

それが自信になり、やがて生きがいになるのです。

さらば学力神話:ぼうず校長のシン教育改革

さらば学力神話:ぼうず校長のシン教育改革

磯村 元信

新評論

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