「死」から逆算して考えてみること
人間は「死」を意識した時に、人生で本当に大切なものは何だったのかということに気が付くのだそうです。
緩和ケアの介護を長年勤めて多くの人を看取ったブロニー・ウェアという人が、自分の体験に基づいて書いた『死ぬ瞬間の5つの後悔』(新潮社)という本があります。
この本には、死を前にした時、人は何を思い、人生において何を後悔するのかが書かれているのですが、その多くは、「自分のやりたいことをもっとしておけばよかった」「もっと人とのつながりを大切にしておけばよかった」ということです。
私も70歳を超えましたので、あとどれくらい生きられるのかはわかりませんが、人生の終盤が近づくにつれて、人生で最後に残る大切なものは何だろう、と考えるようになりました。
そして前述の本を読んでみて、一番大切なのは「思い出」ではないだろうか、と自分なりに考えています。人生の充実度を高めるのは、その時々の体験であり、それにまつわる思い出ではないのか、と。
だとすれば、もっと「思い出」を得るためにお金を使うべきなのではないでしょうか。自分のやりたいことにお金を使う、人とのつながりのためにもっとお金を使う、そうしたことの方が、お金を増やすことよりもはるかに大切なことだと思います。
まだ「死」を考えるには早すぎる、あるいはそんなことを考えるのは縁起でもないという人もいるでしょうが、人がいつ死ぬかは本当に誰にもわかりませんし、いずれその時は必ずやってくるのです。
であるなら、ここからの人生を、「死」から逆算して考えてみてもいいのではないでしょうか。
これまで、ただお金を増やすことに一生懸命だった人生かもしれませんが、ここからはどうお金を使うことで人生を幸せにできるかを考えていくべきでしょう。
大江 英樹
株式会社オフィス・リベルタス
取締役