日本人の金融資産保有額「60代1,400万円→70代1,500万円」のデータが示す「老後のお金」に関する誤解と正しい考え方【経済コラムニストの助言】

日本人の金融資産保有額「60代1,400万円→70代1,500万円」のデータが示す「老後のお金」に関する誤解と正しい考え方【経済コラムニストの助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「老後不安」という言葉が喧伝され「お金を増やすこと」がクローズアップされています。しかし他方で、日本人は「死ぬ時に一番お金を持っている」ともいわれます。シニア層のライフプランニング、資産運用等に詳しい経済コラムニストの大江英樹氏が、著書『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(光文社新書)から、老後を豊かに生きるための「お金の使い方」について、詳しく解説します。

死ぬ時に一番お金を持っている

『DIE WITH ZERO』というタイトルが意味するのは、「ゼロで死ね」、つまり「死ぬ時までにお金はすべて使い切ってしまおう」ということです。

 

ところが、実際には多くの人は「死ぬ時に最もたくさんお金を持っている」ようです。

 

[図表5]をご覧ください。

 

[図表5]年代別金融資産保有額

 

これは日銀金融広報中央委員会が調査した「家計の金融行動に関する世論調査」(2021年)にある数字ですが、年代別に金融資産の保有額を中央値で見てみると、60代が1,400万円、70代が1,500万円と、他の年代に比べて突出しています。

 

これを平均値で見てみると、さらに増え、60代では3,000万円にもなります。

 

これを見る限り、「死ぬ時に最もたくさんお金を持っている」というのはどうやら正しいようです。

 

このお金を、生きて元気なうちに使っていれば、どんなに幸せだったろうかということを考えるべきだ、とこの本は主張しています。

 

私もこれにはまったく同意します。やりたいことを我慢して、ひたすらお金を貯めることが果たして幸せなのでしょうか。

 

「黙々と働いて、預金通帳に数字が増えていくことを眺めるのが無上の喜び」という人もいるでしょうが、それはやはりどこか心の構造が歪んでいるのではないかという気がしてなりません。

次ページやはり、「老後不安」というナラティブに踊らされている
90歳までに使い切る お金の賢い減らし方

90歳までに使い切る お金の賢い減らし方

大江 英樹

光文社

◎死ぬ時に一番、お金を持っている日本人 ◎〝老後不安〟という「物語」、〝貯める・増やす〟という  「呪縛」 ◎「コスパ最高!」が日本経済を低迷させている ◎お金よりも優先すべきこと――時間、信用、健康、幸福感……

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