日本人の金融資産保有額「60代1,400万円→70代1,500万円」のデータが示す「老後のお金」に関する誤解と正しい考え方【経済コラムニストの助言】

日本人の金融資産保有額「60代1,400万円→70代1,500万円」のデータが示す「老後のお金」に関する誤解と正しい考え方【経済コラムニストの助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「老後不安」という言葉が喧伝され「お金を増やすこと」がクローズアップされています。しかし他方で、日本人は「死ぬ時に一番お金を持っている」ともいわれます。シニア層のライフプランニング、資産運用等に詳しい経済コラムニストの大江英樹氏が、著書『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(光文社新書)から、老後を豊かに生きるための「お金の使い方」について、詳しく解説します。

やはり、「老後不安」というナラティブに踊らされている

ではなぜ、多くの人がやりたいことを犠牲にしてまで、お金を貯め、増やし続けるのでしょうか。

 

それはやはり、「老後不安」というナラティブがあるからです。人間の行動を強く促す要因には「欲」と「恐怖」がありますが、中でも「恐怖」の力は大きいといえます。

 

そもそも、老後というのは将来のことです。将来のことは誰もわかりませんから、不安が生じるのは当たり前です。

 

しかも最近ではメディアが「老後貧乏」だとか「老後破綻」などという言葉を使って、さらに不安を煽りますから、次第に不安が恐怖に変わっていきます。

 

その上、「老後不安」というナラティブは、金融機関の営業にとっても非常に都合のよい話ですから、これを武器にして金融商品の購入を一生懸命勧めてきます。

 

結果として、どこまでいっても果てのない不安から、お金を増やすことに意欲を燃やし続け、最終的には「死ぬ時に一番たくさんお金を持っている」という状態になるのでしょう。

 

でも繰り返しになりますが、私は、過剰な老後不安を持つ必要はないと思います。日本においては、自営業の人であれば公的年金だけで生活していくのは難しいですが、普通のサラリーマンであれば、そんなに心配する必要はありません。

 

厚生労働省のモデル年金額では、妻がずっと無職であったサラリーマン家庭の場合の年金支給額は、月額で約22万円です。毎年海外旅行に行くとか、頻繁に豪華な外食をするということでなければ、日常生活はこの金額でも可能です。

 

事実、私は定年後、夫婦2人でだいたい生活費は月に21万~23万円ぐらいでまかなえています。

 

もちろん、自分が何歳まで生きるかは誰もわかりませんから、「死ぬ時にゼロにしろ」といってもそんなにうまくはいきません。ただ、仮に90歳までに持っているお金を全部使ってしまったとしても、公的年金は死ぬまで支給されます。

 

私の経験上、年を取るほどお金は使わなくなりますから、同じ年金額で支給されるのであれば、たとえ何歳まで長生きしようと生活に困ることはないでしょう。

 

だから私自身は、自分が持っているお金は、90歳までにほとんど使ってしまってもよいと考えています。

 

もちろん、不測の事態に備えるために、ある程度の現金を持っておくべきだという考え方もありますし、それは間違いではありません。でも、どんな事態になるとどれぐらいのお金が必要かは、事前にある程度読めます。

 

それに、自分のお金でまかなえないような事態に備えるには保険を使えばよいですから、必要以上に過剰なお金を蓄えたり増やしたりしておく必要はないと思います。

 

むしろ、人生後半に向けて考えるべきことは、「お金を増やす」ことではなく、「お金をどう使うか」ということでしょう。

次ページ「死」から逆算して考えてみること
90歳までに使い切る お金の賢い減らし方

90歳までに使い切る お金の賢い減らし方

大江 英樹

光文社

◎死ぬ時に一番、お金を持っている日本人 ◎〝老後不安〟という「物語」、〝貯める・増やす〟という  「呪縛」 ◎「コスパ最高!」が日本経済を低迷させている ◎お金よりも優先すべきこと――時間、信用、健康、幸福感……

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録