アスベストで話題になった「マスクと顔の隙間」だが…
2003年ごろにアスベスト・石綿の問題が話題になりました。
その際、耐火物製造業の作業員が防じんマスクを着用していても、粉じんがマスク内に入り込む割合が24%に達していることが報じられ、アスベストを扱う現場も同様と考えると、マスクがじん肺の発症予防に役立っていない恐れがあることがニュースになりました(日本経済新聞2006年4月11日記事)。
このニュースをきっかけに、マスクは製品の性能以外に「マスクと顔の隙間」の問題がクローズアップされ、「マスクフィット」ということが盛んに言われるようになったのです。
しかしながら、喉元過ぎれば熱さを忘れるとでも言いましょうか、マスクフィットの重要性はすでに忘れ去られてしまい、今やフィルター性能の宣伝競争になってしまっています。
それにしても、調査の結果に見たマスクの漏れ方は尋常ではありませんでした。これでは人に感染するウイルスや治癒が困難なウイルス(SARSやMERS)が流行した際、簡単に危険に身をさらしてしまうでしょう。
現に、ボランティアでエボラ出血熱の治療にあたった医師や看護師が亡くなっています。マスクだけではなく、手袋や防護服の着脱などを含めて、彼らはどのようにウイルスとの接触に対応していたのでしょうか。
ただ性能の良い材料や品質保証された防護具をつけて大丈夫と思い込んでいるだけでは、身を守ることはできません。
今やマスクや防護具の技術は進んでおり、マスクの選択肢は広がっています。自分の顔に合った正しいマスクを選択し、適切に着用することで、このような事態を防ぐことは可能なのです。
大西 一成
聖路加国際大学大学院公衆衛生学研究科 准教授 医学博士