クレディ・スイスのAT1債に何があったのか
クレディ・スイスの救済措置で目を引くのは、株主が30億スイスフラン相当のUBS株を受け取る一方で、160億スイスフランのAT1債の価値がゼロになることです。
AT1債は、今回のような危機の際に損失を被ることを想定した債券の一種です。しかし、AT1債の保有者より先に株式の保有者が損失を被ることが予想されていました。
ジャスティン・ビセカーは次のように述べています。
「この決定により、AT1債市場、特に銀行セクターにおいてリスクが高いとされている銀行について、多少の混乱が生じるでしょう。これはスイス連邦金融市場監督機構(FINMA)による決定であり、UBSによるオファーには含まれていません。クレディ・スイスの事業がいかに厳しい状況に置かれていたかを物語るものです」
ジョナサン・ハリスは次のように述べています。
「実際には、クレディ・スイスのAT1債が資本構造上、株式より上位であるにもかかわらず、取引を成立させるために、スイスの規制はAT1債の保有者に全損を課すことができるように調整されていたのです。欧州銀行監督機構とイングランド銀行は、それぞれEUと英国の銀行について、AT1債の損失引き受けは、株式がゼロになるまで評価減された後であるとする声明を発表しました」
エマージング諸国の銀行が影響を受ける可能性は…
シニア・エマージングマーケット・エコノミストのデイビッド・リースは次のように述べています。
「米国とスイスで起きた最近の出来事から、エマージング諸国の銀行が受ける直接的な影響は限定的であると思われます。トップダウンで見れば、過去の危機の前兆であった過剰な信用供与の兆候を示すエマージング諸国はほとんどなく、預貸率などの主要指標も特に問題があるようには見えません」
「より大きなリスクは、先進国の銀行の問題がより深刻な金融危機へと発展し、グローバルな資本フローを混乱させることでしょう。このようなシナリオでは、欧州の金利はより長く高止まりし、成長の重石となり、債務不履行が増加することになります」
より幅広い経済への影響はどうか
シニア欧州エコノミスト兼ストラテジストのアザド・ザンガナは次のように述べています。
「人々は伝染するリスクを警戒していますが、実体経済におけるストレス要素はそれほど多くはありません。ローンのデフォルトはそれほど多くありません。新規借り入れは減少し、住宅市場は冷え込んでいますが、労働市場は予想よりもはるかによく持ちこたえています」
福澤 基哉
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
執行役員/プロダクト統括
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】