2―調査概要
本稿で用いるデータは、筆者が自治体の乳幼児健診(3ヵ月児)*6に来所された保護者を対象に、無記名自記式質問紙調査を実施し取得したものである。本研究は事前に倫理審査委員会の承認を得た後、自治体の協力の元、対象者一人ひとりに研究内容の説明と依頼を実施し、同意を得られた場合にのみ質問紙へ回答をしてもらった。
調査項目は、年齢や家族構成などの基本属性、産後の健康状態(疲労度や主観的健康度*7)や育児環境、対児感情尺度*8などである。
その結果、757名より同意を得て、アンケートに回答していただき、回収することができた。
尚、本データの研究協力自治体における乳幼児健診受診率は94.0%を占めるが、特定地域の特徴であるというバイアスが生じている可能性があり、一般化することは難しい。
また、子どもが3・4ヵ月時点での横断的調査であるため、長期的な育児の影響を考慮したものではないことにも留意が必要である。
*6:自治体の乳幼児健診は、母子保健法第13条に規定された市区町村に実施義務があり、3ヵ月から4ヵ月を対象に、標準的・個別的な発育発達に関する全身性の健康状態を調べるものである。自治体の小児科医や保健師、栄養士や臨床心理士によって実施され、体重身長、頭囲胸囲などの身体計測に加え、股関節脱臼や首の座り、原始反射の消失具合、育児状況の確認やアドバイスなど多岐にわたる診察・相談が実施されている。
*7:主観的健康度とは、心身の状態を、5件法(「とても良い」「良い」「普通」「悪い」「とても悪い」)で主観的に評価したものである。
*8:対児感情尺度とは、2008年に荒牧らが開発した21項目で5つの尺度を測る質問紙票で、各質問は「4点:よくある」「3点:ときどきある」「2点:あまりない」「1点:全くない」で回答を求め、それらを単純加算し尺度得点を求めている。子どもの態度や負担感のみ5項目5点から20点の範囲で、その他は全て4項目4点から16点となり、合計点が高いほど育児負担感または肯定感が高いことを示している。
3―回答者の基本属性
本データの回答者の基本属性を【図表1】へ示す。乳幼児健診受診者の母親の平均年齢は、32.53±5.1歳(N=729)、最年少が18歳、最年長が48歳であった。
婚姻の状況は、既婚が741名(97.9%)、未(非)婚が16名(2.1%)、就労の有無をみると、専業主婦などの就労なしと回答した者が403名(53.2%)、常勤やパート・アルバイト、自営業などの就労ありと回答した者は353名(46.6%)であった。
家族構成は、核家族世帯が684名(90.4%)、ひとり親世帯14名(1.8%)、複合世帯(核家族と祖父母)とその他世帯(片親と祖父母世帯や、親戚と子ども世帯、養子縁組世帯等)は合わせて59名(7.8%)であった。
回答者の基本属性として、婚姻状況と家族構成、それから就労割合などは、日本全体の構造と合致するものの、回答年齢については、全国の女性の年齢構造よりも30歳代が多く、10歳代及び40歳代が少ない構造となっている。
尚、本調査は特定地域において調査したものであり、回答者の年齢構造も全国とは多少異なることから、調査結果が、必ずしも日本全国の実態を説明しているわけではないことにご留意いただきたい。