5月の社会保障審議会年金部会では、2023年9月や2024年1月に続いて、国民年金の第3号被保険者制度が議論された。ニッセイ基礎研究所の中島邦夫氏が、制度の仕組みや廃止した場合の影響、廃止以外の方策を解説する。
専業主婦が国民年金保険料を納める制度に変えると、低所得者が不利に!? (写真はイメージです/PIXTA)

専業主婦が保険料を納めないのは不公平?

国民年金の第3号被保険者には、厚生年金加入者に扶養される60歳未満で国内に住む年収130万円未満の配偶者が該当する。第3号被保険者の基礎年金は、1985年改正前の旧厚生年金の定額部分と加給年金から分割されたものであるため、第3号被保険者自身は保険料を納めず、配偶者が加入する厚生年金制度全体で必要な費用を負担している。

 

当制度に対しては、「専業主婦[夫]が保険料を納めないのは不公平だ」という批判をよく聞く。確かに、個人単位の「保険料を納めるか否か」に着目すれば、不公平に感じる。しかし、世帯単位の負担と給付の関係に視野を広げれば、世帯収入が同じ片働き世帯と共働き世帯の負担と給付は同じになっている[図表1]

 

他方で、世帯収入が同じ夫婦世帯と単身世帯を世帯単位で比べると、両者の負担は同じであるものの、単身世帯は基礎年金を1人分しか受給しない(図表1下)。しかし、世帯員1人あたりで比べれば、両者(夫婦世帯の1人あたりと単身世帯)の負担と給付は同じになっている。図表1の例では、世帯年収600万円の夫婦の1人あたりと世帯年収300万円の単身者は、同じ負担と給付である。