4―育児の状況
次に、育児の状況として、授乳方法、子どもとの同室就寝の有無、同室寝具の有無、育児協力者の存在有無、育児相談者の存在有無について調査した結果を【図表2】へ示した。
その結果、授乳方法では、完全母乳が424名(56.0%)、ミルクだけの人工乳が101名(13.3%)、母乳と人工乳を混合している混合栄養は230名(30.4%)、離乳食などを含むその他は2名(0.3%)であった。
子どもとの就寝方法(N=756)*9については、同室就寝が740名(97.9%)、別室就寝は16名(2.1%)であった。
子どもの寝具の状況(N=739)については、同寝具が402名(54.4%)で、別寝具が337名(45.6)であった。
育児協力者の有無では、育児協力者がいる者が730名(96.4%)、育児協力者がいない者は27名(3.6%)であった。また、育児相談者の存在の有無については、育児相談者がいる者が750名(99.1%)、育児相談者がいない者は7名(0.9%)であった。これらの結果から、授乳方法は完全母乳を選択している者が半数を占めており、母乳神話などの影響を含め、従来の授乳方法が根強く残っていることが明らかとなった。
また、海外では別室就寝・別寝具で子どもを寝かせるスタイルが一般的であるが、日本では、子どもと親が同室就寝するスタイルが100%に迫る割合で、同室同寝具も5割を越していることが明らかとなっており、これら日本古来の就寝スタイルが、後述する頻回な夜間対応に影響を与えることを示唆するものとなった。
さらに、育児の協力者や相談者の存在があると回答した者が9割を超えている一方で、育児協力者について、3.6%の母親には育児協力者がいないと回答している。単独育児がいかに過酷なものかを知る育児支援者の立場からは、育児を分担すること、もしくは頼れる者の存在を確保できる環境整備が急務であることは明らかである。
現在の、日本の産後の育児支援システムにおいて、育児協力者や相談者がいない者を極限まで減らす(0%にする)ことは、社会的な育児支援制度を整えるうえでの必要最低限の目標となろう。
*9:以下、各設問に対する回答総数が、全数757未満である場合に、N=〇〇と表記する。
5―育児中の母親の健康状態
続いて、育児中の母親の健康状態として、睡眠時間や、夜間起床回数、主観的健康度について調査した結果を【図表3】へ示す。
調査の結果、3ヵ月・4ヵ月の子どもを持つ育児中の母親の睡眠時間は、平均6.66±1.96時間、最大が18時間、最小が2時間であった。
また、3ヵ月・4ヵ月の子どもを持つ育児中の母親の夜間の起床回数は、平均1.56±1.10回で、最小0回、最大11回であった。
さらに、3ヵ月・4ヵ月の子どもを持つ育児中の母親の主観的健康度は、非常に良いと回答した者が260名(34.3%)、良いと回答した者が315名(41.6%)、普通と回答した者は163名(21.5%)、悪いと回答した者は19名(2.5%)であった*10。最小睡眠時間が2時間で、育児に必要な夜間の起床回数が最大11回、健康状態が悪いと回答した者も存在している実態が明らかとなった。
約4分の1の母親は睡眠時間が6時間未満であるという結果から、母親の健康状況として、3ヵ月・4ヵ月の子どもを育児している保育者は、まともに寝られず、まとまった睡眠時間も確保できない可能性があることが分かる。この睡眠不足が母親自身の健康状態にも影響を与えることは必然であろう。今回は、母親を対象としているが、男性育休が推進される昨今の日本では、仕事と育児の両立を求められる男性の健康状態にも影響を与えかねないことは、今回の結果より明らかである。
女性に関しては、産後の母体の回復もままならない中で、子どものサーカディアンリズム*11が整うのにも個人差が非常に多く、3・4ヵ月の子どもを抱える家庭では、母親の健康状態に影響を与えるような過酷な育児状況に置かれていることが明らかになった。
*10:健康状態が「とても悪い」と回答した者は0名であったため、記載省略。自治体の乳幼児健診の特性上、体調が非常に悪い者は、乳幼児健診に来所せず、行政保健師や病院スタッフが対応している可能性がある。今回は、保健センターに来所された保育者という調査対象からは必然的に除外されていることにご留意いただきたい。
*11:サーカディアンリズム(概日リズム)とは、生物は地球の自転による24時間周期の昼夜変化に同調して、ほぼ1日の周期で体内環境を積極的に変化させる機能をもつ。この24時間周期のリズムのことを言う。